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449 リサイクル

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 ワンボックスカーをレンタルしたのはヤマダ家の長男。
 大学院に通う彼は教授からの命令にて、この車を運転してあるところへ向かうことに。
 車内には研究室から吐き出された不用品の数々が満載。
 と、いってももちろん危険物系はなくって、わりと私物のどうでもいい品ばかり。
 通信販売で購入したものの三日坊主で終わったダイエットグッズの数々とか、使わなくなったスチール棚やプラスチックケース。壊れたストーブ、型落ちにていつ火を噴くかわからない電子レンジ、横着しているうちに山となった空き瓶、買い物するたびにとっておいたビニール袋に紙袋、ヘンな汚れがこびりついている食器、不要となった書類、とっくに賞味期限のきれている年代物のレトルト食品、なにやらよくわからないナゾの冷凍肉の塊……。
 目ぼしい品はとっくに学生たちに漁られており、後に残ったのは誰からも見向きもされなかったモノばかり。
 くじ引きにて、こいつの処分を任されることになったのが、ミヨちゃんの長兄。
 ちまちまゴミの回収日を待っていたら、ちっとも片付きやしない。それどころかむしろ増えていく。どうやらドサクサに紛れて家から不用品を持ち込んでいる学生がいるようだ。
 このままだと埒が明かないと考えた長兄は、車を借りてまとめて市郊外にあるリサイクルセンターに持ち込むことにする。
 荷造りは難航した。数々の問題が立ちふさがる。
 なにせゼミの研究室は研究棟の四階角部屋。
 つまりそこから一階正面に停めた車まで荷物を運ばなければならない。研究室に在籍しているメンバーをフル動員しても、何往復するハメになり、全員の膝が悲鳴をあげた。中には体育会系もいたのだけれども「ふだんと使う筋肉がちがう」とのこと。これがまず一つ。
 いざ、積み込む段になって適当に突っ込んでいては、もちろんすべてが収まらない。
 車は借り物ゆえに時間制限もあり、何度も行き来できるほどの余裕はない。なによりめんどうくさい。だから一度で済ませるためには、すべての荷を上手に車内におさめる必要がある。重心もある程度は考えないと。そのせいで体感型パズルゲームを実践するハメとなった。これが二つ目。
 どうにかすべてを積み込み終えたとき、バックミラーにはゴミしか映っていない状況であった。だがこれであとは安全運転にてリサイクルセンターへと持ち込むばかり。
 とはならないのが三つ目。積み込んだ以上は下ろさなければならぬ。
 積み込む際には大人数が動員できたけれども、このままでは荷降ろしは一人。だからゼミの誰かを連れていこうとしたのだけれども、みんないつの間にか姿を消していた。
 こうなっては一人で向かうしかない。だが厳しい。
 そこで悩んだすえに彼は頼もしい助っ人を頼むことを思いつく。

 緑や畑の方が家よりも目立つ郊外の道路をひた走るワンボックスカー。
 運転席にはヤマダ家の長男のヒロ兄。
 助手席には彼の末妹のミヨちゃんとその仲良しのヒニクちゃんの姿。
 ネコの手も借りたいと願ったヒロ兄が頼ったのは、なんと幼女たち。
 とはいえこれにはちゃんと理由があって、その目論見は見事にハマることになる。
 郊外の山の中にあるちょっと奇抜な建物。そこがリサイクルセンターにて、直接の持ち込みも可。重量によって料金が発生するものの、それとて破格の安さ。
 受け付けにて車ごと大きな体重計にのっての測定。そのまま移動して建物内部へ。
 そこで係のおじさんの誘導に従い停車。あとは荷をせっせと運びだし、所定の場所へとふりわけるのだけれども……。
 荷降ろし作業、わずか五分ちょいで終了。
 積み込み作業にかかった労力と時間に比べるとあまりにも短い。
 その理由はミヨちゃんとヒニクちゃん。
 小さな幼女たちが荷運びようにゴム手袋をはめて、「さぁ、やるぞー」とあぶなっかしい姿をさらせば、周囲の大人たちが放っておかない。いや、これを見過ごす奴は鬼だろう。
 むさ苦しい大学生のあんちゃんが汗をかくのは、平然と見過ごせるおじさんたちも、相手が女子どもとあっては態度が豹変。
 ましてやミヨちゃんはお年寄りキラーの異名をもつ、愛想のいい小学二年生。
 無自覚にてヨイショ、これにすっかり気をよくした野郎どもを、たちまちアゴでこき使う様は、まるでサーカスの猛獣使いのごとし。
 幼女の歓心を買おうと、我先にワンボックスカーに群がる逞しいおじさんたちのおかげで、あっという間に片付いてしまった。
 これに密かにほくそ笑んでいたのはヒロ兄。これこそが彼の狙いであったのだ。
 そんな一同を尻目に、捨てる予定のボディブレードをびよんびよんしていたヒニクちゃん。おもむろにつぶやく。

「すごいゴミの量。人の営みってスゴイのね」

 あれもこれもそれも、いずれはすべてゴミになる。
 人は日々、ゴミを生産しているといっても過言ではない。
 直に目にすると、リサイクルうんぬんが絵空事に思えてくる。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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