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441 こうもり

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 本日の体育の授業は走り幅跳び。
 校庭の片隅にある砂場にて、子どもたちが元気よく駆けては飛び跳ねている。
 それを尻目に近くにある鉄棒にて、ぶらぶらしていたのはミヨちゃんとヒニクちゃん。
 とっくに自分の番を終えて、ヒマだったので鉄棒で時間をつぶしていた。
 鉄棒の上に腰かけるようにして、器用に座っていたのはミヨちゃんたち。
 ふいに両ひざをかけて、ぐりんと逆さ吊りのかっこうになる。
 まだまだ体重が軽い幼児ならではの、身の軽さ。
 ミヨちゃんに倣ってヒニクちゃんも、ぐりん。
 二人して髪の毛をばさりとし、シャツをペロンとさして、かわいいおへそをさらしながら、ぶらぶらしていたら、アイちゃんがあわてて「何やってんのよ! あんたたち」
 クラスのオシャレ番長は、オシャレに余念がないわりには、ちょっと古風にて慎み深い一面も持ち合わせている。それゆえにいかに小学校二年生とはいえ、女の子があまりにも無防備な姿をさらすのをヨシとはしていないのである。
 ぷりぷり怒るアイちゃんのお説教を適当に聞き流しながら、なおもプラプラしていた二人。
 さすがに頭に血がのぼってきて、苦しくなったので姿勢を戻し、地面にすちゃっと降りたミヨちゃんとヒニクちゃん。
 しばらくぼんやりしていたら、ふいにミヨちゃんが「あれ?」と声をあげた。
 どうしたのかと思えば、こんなことを言い出す。

「コウモリってさっきみたいに逆さでいるよね。どうして頭に血がのぼらないのかな」

 この発言を受けて周囲がざわざわ。
 言われてみたらたしかにそうだと、騒ぎ出す。
 すると動物好きなある子が、「コウモリは空を飛ぶために体が軽いからだよ。骨とかがスカスカなんだって。だから立ってるよりもぶら下がっているほうが楽だから、ぶら下がって生活しているんだよ」と言った。
 この博識に「おぉー!」と子どもたちのあいだでドヨめきが起こる。
 だがここで物言いがあがる。

「それならトリだって同じだろ? でもトリはさかさまに枝にとまってなんかいないぞ」

 ちょうど近くの木の枝にとまっていた黒い姿が目に入り、いきなり子どもたちから注目されたカラスが「かぁ」と鳴いた。

「逆さまになるといえば、ナマケモノも同じよね。あれもずっとぶら下がっているし」

 飛びもしないのにコウモリと同じナマケモノ。
 コウモリと同じように飛ぶのに、なんだかちがうトリ。

「そういえばコウモリがトリからもケモノからも仲間ハズレにされちゃう話があったよね」

 そんな発言まで飛び出し、子どもたちがみな頭にハテナマークを浮かべることに。

「ひょっとしてみんなとちがうから、逆さまでも平気とか」

 ミヨちゃんがそんな意見を口にしたところで、おもむろにヒニクちゃんが口を開く。

「コウモリの毛はふさふさ」

 コウモリがのぼせないのは、のぼせるほど血がないから。
 ナマケモノは耳の奥がめまいを起こしにくいようになっている。
 あとコウモリは哺乳類で唯一、ちゃんと飛べるすごいヤツ。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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