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428 シチュー

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 ゴロゴロお野菜がたっぷり、ことこと煮込んだホワイトシチュー。
 ホクホクジャガイモ。かぼちゃでクリーミー。つぶつぶコーンに冷凍のミックスベジタブル。トリやブタ、牛肉なんかもいいけれど、ウインナーもなかなか。
 あえてとき卵だけを落とすシンプルなのもさらりと飲めて美味。
 けっこうどんな具材を投入しても、それなりに仕上がるのはカレーと同じだけれども、ホワイトシチューには刺激が少ないぶんだけ、どこか心をほっこりさせてくれる癒し効果がある。
 そんな幸せな食べ物が、いま騒動を引き起こしている。
 場所はミヨちゃんの教室。

「シチューをゴハンにかけて食べるとおいしいよね」
「えっ! シチューはパンでしょ。ごはんなんて邪道だよ」
「なんで? うちもゴハンだよ」
「うちはフランスパン。パンにつけて食べるの大スキ」
「昼ならともかく夜はゴハンじゃないと食べた気がしないかなぁ」
「具がごろごろしてるシチューだと、パンじゃあ食べづらい」
「カレーがゴハンなんだからシチューもゴハンでいいじゃん」
「カレーとシチューは別でしょ。だったらデミグラスはどうなるの?」
「あれってハヤシっぽいからゴハンでいいんじゃない」
「えーっ、うちはホワイトもデミグラスもどっちもパンだよ」
「ボクのところは全部、ごはんかなぁ。いちいち変えるのお母さんが手間だもの」
「二日目にトーストとあえてグラタン風にするのもありよね」
「うちはパスタにあえるよ。スープパスタも」
「うそ、なにそれ、すごくおいしそう」
「メンもゴハンも同じ炭水化物なのに、なんだこのオシャレ感の差は……」
「まぁ、カレーうどんがあるんだから、シチューパスタもおかしくないか」
「だったらうどんを入れる? でもとたんにダサくなるよね」
「海外の喰いもんなんだから、パンで正解なんじゃないの」
「でもその理屈ならカレーもオムライスも成立しないよ」
「パンにつけて食べるのは下品だって、怒られたことある」
「あー、食べるときにぺちゃぺちゃするんだよね」
「そうそう、パンで食べると気をつけないと指をヤケドしちゃう」
「だったらやっぱりスプーンで食べるゴハンがいいのかしらん」
「いや、手とスプーンを使い分ければいいだけじゃない」
「なんかめんどうくさい」
「喰い方なんてどうでもいいんだよ! 問題なのはパンかゴハンかだろう!」
「はっ、そうだった。うーん」

 三人集まれば文殊の知恵といういけれど。
 船頭多くして船山のぼるとなるのがほとんど。
 頭のいい大人たちが角を突き合わせても、だいたいがそんな感じになるので、子どもたちが集まったところで、明確な答えなど出るわけもなく、議論はムダに白熱するばかりで、ちっとも結論へとたどり着けない。
 我が家の常識、世間では非常識なんてケースもままある。
 とはいえ我が家の食卓を否定されるのは、どうにも承服しかねるもので、じきに意地の張り合いみたいな様相を呈していく。
 ちょっと険悪なムードになってきた教室内。
 そんな空気の中でミヨちゃんが「うちはゴハン派なんだよねえ。お兄ちゃんたちがよく食べるから、パンなんかじゃあ追いつかないの」とつぶやく。
 これを受けて、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「両方楽しめばいい」

 初日は優雅にディナーを気取って、パンでおしゃれに。
 次の日のお昼はどんぶりメシにぶっかけて、ガツガツ。
 三日目は……、さすがに三連ちゃんはちょっとキツイかも。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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