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406 呪いのわら人形
しおりを挟む近頃、地元の神社が話題沸騰。
流行のパワースポットに選出されたとかではなくて、原因はべつにある。
境内の中の一本の木に、わら人形が打ちつけられてあるのが発見されたからだ。
五寸釘にて憎い相手への想いを込めて、夜更けにトンカントンカン。
伝統と格式ある呪法。
効果のほどはともかくとして、なんとも不気味なシロモノ。
そんなモノが発見されたとあっては、ちょいと見てみたいと思うのもまた人の心理。
いわゆる怖いモノみたさ。そのせいで連日にわたり野次馬が殺到しており、子どもたちの姿も多く集っていた。
もちろんミヨちゃんも見物に行く。
学校の近くということもあって、この手の話題には消極的なアイちゃんを含め、リョウコちゃんやチエミちゃん、ヒニクちゃんの五名でお出かけ。
アイちゃんはあまりホラー系が得意ではない。
だから終始、いざともなれば一番頼りになりそうなリョウコちゃんの腕に終始しがみつき、腰が引けたまんま。
他の幼女たちはわりとちょくちょく神社で遊んでおり、ここは自分の庭みたいなものだから平然としている。
「どの木かなぁ」とミヨちゃん、きょろきょろ。
丁度、人の出がはけている時間帯のせいか見物客が他にいないので、自分たちで探すハメになった幼女たち。手分けして木を確認していく。
しばらくして「あったよー」と声をあげのはチエミちゃん。
で、五人揃って眺めてみたのだが……。
「これは確かにいろんな意味でこわいわね」とはアイちゃん。
「こわいというか、なんか臭うな」とはリョウコちゃん。
「人形うんぬんよりも、わたしは位置がこわいね」とはチエミちゃん。
「あんなところ、ふつう気づかないよね。やっぱりニオイのせいかなぁ」とミヨちゃん。
「……」じーっと見上げたまま、まんじりともしないヒニクちゃん。
五人の幼女たちのいささか冷ややかなこの反応。
その理由はこうだ。
呪いのわら人形が地上二メートル以上もの高さに打ちつけられてある。脚立を用意したのだろうか? それとも肩車? どちらにしてもご苦労なことだ。そしてかなり間抜けな光景であろう。
あとは身長二メートルオーバーが犯人という可能性もわずかに残っているが、それだけの立派なガタイがあるのならば、たいていのヤツはひれ伏す。こんな真似をする必要があるまい。よしんばそれが事実だとして、それはそれでこわい。
呪いのわら人形がやたらとにおう。それはわら人形が納豆のワラで造られているからだ。いざ人形を作ろうと思い立っても、ワラなんて街中ではそうそう手に入らない。田舎とか田園風景のあるところならば可能だろうが、それとても季節を選ぶであろう。
で、身近なところで探すと真っ先に見つかるのがスーパーの納豆売り場。それもふつうのスーパーではダメだ。その辺のお店だとパック入りのモノしか置いてない。自然派食品にチカラを入れている店舗か、もしくは高級嗜好のスーパーでないときっと扱ってない。あるいはアンテナショップの類やデパートの地下とか。
「よっしゃ! 呪うぜ」と思い立ち、たまたま手元にあったのか、必死に探し回ったのかによっても、また印象がかなり異なるであろう。
もしも後者であったのならば、それはそれは切ないものがある。
あと食べ物を粗末にするな! との意見でも幼女たちは合致している。うん、コレはよくない。
呪いのわら人形の作りがかなり残念。
胴体部分は納豆のやつをそのまま。でもこれだと手足が足りない。
このまま釘を打てば、ただの納豆の標本だ。
それは犯人も考えたのだろう。だが手元にはもうワラがなかったのだろう。
ニ三個購入して、ばらして使うという発想もなかったようだ。
人形の手足は割り箸がズブリと本体につき刺すことでまかなわれていた。
世にも奇妙でやる気を感じさせない呪いのわら人形。
こんな手抜きでいったい何を呪うというのだろうか?
それどころかかえって人形に恨まれて、速攻でしっぺ返しをくらいそうな気がする。
「やってることと、かけてる手間ひまと、労力とかがチグハグすぎてワケがわからないわね。そういった意味での支離滅裂ぶりはこわいかも」
アイちゃんの感想に、みんながウンウン。
これを受けて、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「わら人形ならア〇ゾンで売ってる」
さすがは世界最大の通信販売サイト。しかもとってもリーズナブル。
ちなみにジャンルはコスプレとかおもちゃ。効果のほどは秘密。
これもある種のわらしべ長者プロトコルなのかしらん?
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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