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397 集会

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「地元の理解を求めるって、あんた、それって結果ありきじゃないんですか?」
「こんないい加減な資料で、オレたちを騙す気だったのか!」
「言ってることとやってることがちがうじゃないか! この嘘つきがっ」
「なんだその不貞腐れたような態度は? やる気がないならとっとと帰れ」
「どうしてそんなに急ぐんのですか? 事前になんのアクションもなかったし」

 集まった市民の方々からの怒号が鳴り止まないのは、某所にて開かれた某集会での一幕。
 終始、客席からマイクを握った参加者らに責め立てられて、しどろもどろな壇上の主催者側の人たち。
 気の毒なぐらいに汗でびしょびしょ、髪の毛はへにょんとなり、白いカッターシャツが肌にはりついて、なかなかの見苦しさ。
 なにかの公的施設の建築計画を巡っての騒動。
 わりとよくある問題ながらも、こんかいはたまたま手が空いていたマスコミが喰いついた。カメラが入ったことにより、勢いづく市民側とは対照的に、急にカメラを向けられることになった側はたまらない。うかつな発言や態度、ちょっとしたミスのその全てが映像におさめられてしまうのだから。
 最悪、一部だけが切り貼りされて、えげつない編集の餌食となることも。
 かといって「カメラ撮影はご遠慮下さい」とでも言おうものならば、それこそ報道の自由だのなんぞと騒がれる。
 で、しぶしぶ受け入れたらコレだ。
 こんな状態で、むしろ話し合いができたら、きっと人類はもっと平穏に暮らせているはず……。

 そんなシーンをきのうの夜ニュースで見かけたと話題にしたのは下校中のミヨちゃん。となりにはいつものごとくヒニクちゃんの姿もある。
 家族そろってテレビを見る機会の多い幼女は、わりと報道番組にも目を通している。
 リアルは下手なアニメやゲームなんかよりも、よっぽど刺激的だと薄々勘付きつつある今日この頃。
 だがミヨちゃんの話の本題はここからであった。

「あー、なんだかモメてるなぁ。とかおもったの。でもそしたらおばあちゃんが言ったの。『ミヨ、あのマイクパフォーマンスをしている連中、地元の関係者でもなんでもないから』って」

 地元のための集会に部外者が紛れ込んでいる?
 しかも我が物顔にてのあの強気の発言?
 おかげで話し合いの席はぶちこわし?
 まったくもって意味がわからんと、ミヨちゃんが首をかしげる次第。

「ほら、デモとか抗議集会とかなら、まだわかるの。でも騒いでたのは説明会……。いろいろインチキしていた主催者側もダメだとはおもうの。だからってはなからケンカ腰じゃあ、やっぱり話どころじゃなくなるでしょう? おばあちゃんなんかは『火に油を注ぐ』とか言ってたけど、あそこからどうやってラストシーンにもっていくのかなぁって、すごく気になった。ちゃんとオチがつくのかなぁ」

 いろいろ仲たがいや誤解やスレちがいなんかもあったけど、最後には固い握手を交わし、抱き合いながらの涙の大団円。
 マンガやアニメやドラマならば、それはお約束。
 でも現実では、そこのところどうよ? とミヨちゃん。
 友の疑問を受けて、おもむろにヒニクちゃんが口を開く。

「やったもん勝ち」

 やれ反対だ、集会だ、署名だ、抗議活動だ、と張り切った末に、
 半ば強引に着工。あげくに待つのはダラダラと続く裁判沙汰。
 牛歩戦略によって、人民の結束や足並みが乱れて疲弊の果てに惨敗。
 ケンカは先手必勝にて、地力で劣る側がのんびりとかで、勝てるわけない。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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