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369 米

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 米の消費量が右肩下がりにグングン減っているらしい。
 だから生産農家さんがとってもたいへん。
 なんとかしてこの流れを食い止めようと、業界なんかもあの手この手。
 米粉をつかった新たな食の分野を開発したり、米料理を推進したり、美味しいお米の情報なんかを配信したり、可愛い女優なんかをキャンペーンに起用してバンバン宣伝したり。
 それでも微妙にて四苦八苦しているんだとか。

「でも、これっておかしくない? だってウチは毎日、もりもり食べてるのに」

 異議を唱えたのはミヨちゃん。
 二男一女の三兄妹な彼女の家では、とくに上の二人の子どもたちは育ちざかりにつき、よく食べる。
 夜はほぼほぼお米だし、朝はパンと半々ぐらいだけれども、そんな生活をずっと続けている。

「うちも基本は米だね。パンって腹持ちがいまいちだし、なんだか力が出ないんだよねえ」

 そういったのはサッカー少女のリョウコちゃん。
 体育会系イコール米、米食なくしてアスリートの体なし、というのはさすがに偏見がすぎるが、それぐらいに米を好む者が多いのも事実。
 パンが悪いとはいわないけれども、いろいろと中に入っている分だけ、かえって調整が難しいとの意見も彼女は口にする。喰うだけでなく体重の増減にも気を配る、小学二年生とはおもえぬ、徹底ぶりにみんなちょっと感心。

「わたしのところは朝は米とみそ汁、お父さんがこれじゃないとダメなんだって。むかしはパンの朝食とかに憧れた時期もあったけど、いまではすっかり米派かな。そのうちに時代がTKGになったから。世の中、わからないもんだね」

 チエミちゃんの家は完全にお米党。
 ちなみにTKGとは、卵かけご飯のこと。
 新鮮で安全な卵と、おいしいお米が揃わねば存在しえない、奇跡のコラボ。
 そのバリエーション、奥深さは無限の可能性を秘めており、その深淵を極めるには人の一生はあまりにも短く儚いという。
 なおチエミちゃんは、沖縄土産で貰った塩をひとつまみ。
 パラリとやるのが近頃のお気に入りとのこと。

「あー、うちはお姉ちゃん絡みで、たまに抜くかも。撮影前とかになると、やっぱり気になるみたいで」

 そう言ったのはアイちゃん。彼女の高校生のお姉さんは読者モデルをしているので、やっぱりカロリーやらボディラインには敏感。
 急な糖質制限ダイエットがあまりよろしくないとはわかっているけれども、あの年代の乙女はなかなか、どうして。
 自分の家の食生活を改めて振り返ると、半々かもしれないとアイちゃん。それでも夜はほとんどお米が出るそうな。

「お寿司だって、カレーだって、チャーハンだって、オムライスだって、お団子だって、みんな大好き。餃子に焼肉にだってゴハンは欠かせない。ところによってはお好み焼きでゴハンを喰らう猛者どもが住まう地域もあるという。海外からのお客さんもドシドシ。なのにどうして減るのかな?」

 ミヨちゃんの疑問を受けて、幼女たち、みんな首をひねった。
 言われてみればたしかにおかしい……、それに国策だかで減反だの生産出荷制限だの、いろいろと面倒なことがあったとか、社会科見学にて農業体験をしたときに、指導員のおじいちゃんに聞いたこともある。
 いろいろ減ってるわりには、コンビニやスーパーにはいつもお弁当やらおにぎりが並んでいる。
 むしろ販路はここ近年、一気に拡大したはずなのに、それでも減ってる?
 ヨーコ先生なんて米からつくられるお酒を、毎日、ガブガブ飲んでいるというのに、それでも追っつかないほどの減少ペース?
 生産量は減り、作る農家さんも減ってる。そして人口も減ってる。
 もろもろ全部がそろって減ってるのならば、どうして米の消費量だけが際立つことになるのだろうか。
 ミヨちゃんがこの度、こんな疑問を抱いたのは商店街のお米屋さんの愚痴を聞いたから。
 これらの話にじっと耳を傾けていたヒニクちゃん。おもむろに口を開く。

「改正食糧法が遅すぎた感がいなめない」

 計画流通制度、減反政策、農地法による売り買いの制約などなど。
 ごちゃごちゃ面倒ごとがあまりにも多すぎた。そのくせ改訂、廃止がのろのろ。
 あげくに自給率がどうの、廃棄率がこうのとか、まずは全役所オール米化から。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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