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365 水圧
しおりを挟むかつてテレビ、冷蔵庫、洗濯機が家電の三種の神器なんて言われた時代があった。
人々の生活を、日々の在り方を大きく変える品の登場。それは人類の革新。
近年にて爆発的に普及したのはなんだろうか?
パソコン?
使いやすいOSの出現、低価格化、インターネットの普及、IT化の推進……、いろんな条件が重なったのだが、一家に一台が当たり前となるほどには、広まる。
携帯電話?
単純に電話としての機能だけでなく、やはりメールのやりとりができるのが大きかった。普及はじめの頃こそは、社会で活躍する大人の必需ツールのような印象であった機器は、気づけば若者を中心にして市場を拡大。様々なニーズに応えて進化を遂げて、ついには後のスマートフォンなどの端末化へと発展していくこととなる。
他にもいろいろある。
電動自転車は、小さなお子さんを連れたママさんたちの強い味方となり、少々足腰が弱くなったご婦人方の頼れる相棒となった。
掃除ロボットは、家の中を勝手にぐるぐる。たまに部屋の隅っこにて悪戦苦闘をしているけれども、休日のお父さんよりかは役に立っている。
電気ポットのおかげで、いつでもアツアツのお茶が飲み放題。
炊飯ジャーなんて、おどろくほど美味しくお米が炊けるようになった。まぁ、たまに外れの製品もあるけれども。
洗濯機は縦から横へと寝転がり、冷蔵庫なんてペラペラしゃべるモノまでいるんだとか。
世の中、本当に便利になった。
だが忘れてはいけないモノがある。
それはみんなのお尻をケアしてくれる、あの子のことだ。
「で、ぶっちゃけ、みんなどれくらいの水の勢いで使ってる?」
長々と高説を述べたあげくに、この質問を口にしたのはミヨちゃん。
まさかの給食の時間に、いきなり下の話となったんで、おもわずチエミちゃんが飲みかけの牛乳を危うく吹きだすところであった。
「なんだって急に……、いや、別にいいんだけど。そうねえ、わたしはわりと軽めかなぁ」
なんだかんだで質問に真っ先に答えてくれたのは、クラスのオシャレ番長のアイちゃん。たまにうっかり考えなしにボタンをおしたら、もすごい勢いにて驚いたなんていう、ウォシュレットあるあるネタまで披露するサービスっぷり。
「あー、あれなぁ。まえに弟がいたずらをしてトイレを水浸しにして、お母さんにめちゃくちゃ怒られたことがあったよ。でもアレってすごいよな。天井まで届くって、いくらなんでもやりすぎだろう」
小さな弟さんがいるリョウコちゃんの家のほのぼのエピソード。
彼女の疑問はもっともである。デリケートエリアに高圧洗浄機を噴射とか、ちょっとメーカー側の考えがわかんないと首をひねらざるをえない。
「大人のあととか、わりと気をつけないと『ヒヤッ!』とすることあるよね。あれは心臓に悪い。あと外で使うのはちょっと抵抗あるかなぁ」
そう言ったのはチエミちゃん。前にデパートでトイレの順番待ちをしているときに、中からもの凄いキレイな外国人モデルみたいな人が出てきたことがある。そのあとに入ったのだが、まさかのマックス設定にて、つい悲鳴をあげて外の人らに心配されて、それはそれは恥ずかしい思いをしたんだとか。「外人ってなんかすごいよね」とちょっと遠い目にて語る。
と、こんな調子にて、みんなから色んなエピソードや設定なんぞの聞き取り調査をしたミヨちゃん。じつはこの水圧にてちょっと困っていた。
ヤマダ家は二男一女に両親に祖母の五人家族。トイレは一つだから朝はわりと大変。
それはまぁいい。問題はウォシュレットの設定。
大人と子どもでは、そもそも感じ方がまるでちがうのは当たり前。
男と女でも、若者と老人とでもその差は顕著。
で、五人もいれば体型もばらばらにて、当然のごとくデリケートな箇所の位置もばらばら。毎度毎度、使う前に設定をし直す必要がある。朝のいそがしいときに、これはとっても面倒。そして問題の水圧だ。ちゃんと的に当たればよし。だがうっかり変なところに当たろうものならば、とたんにびちょ濡れに。ただでさえ急いでいるというのに、これは心底腹が立つ。しかも一人がミスるとその後の面々すべてに影響が及ぶ。
「いや、あの水がキレイだってのはわかっているんだよ。それこそ飲んだって平気なぐらいに。でも気分的にトイレでぬれるのって、なんだか、すごくへこむの」
ミヨちゃんややしょんぼりにて、ちょっと黄昏れる。
どうやら今朝方、やらかしてしまったようだ。だからこそのあの問いであったのだろう。
これを受けてアイ、リョウコ、チエミ、らは考え込む。何故なら他人事ではないから。いつ自分の身に降りかかってもおかしくない災難。
どうにかできないものかと、真剣に協議を始める。
これを受けて、ずっと沈黙を守っていたヒニクちゃんが、おもむろに口を開く。
「水圧は弱めが正解」
洗顔といっしょで、やたらとゴシゴシ洗い過ぎるのはよくない。
皮膚を守る諸々まで流してしまい、デリケートゾーンがいっそう
デリケートな状態に! だったら強い機能なんて端から着けるなよ。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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