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360 リアル
しおりを挟むAIなるものが世を席巻しているそうな。
いわゆる人工知能みたいなものを想像するはミヨちゃん。
細かい差異やら、理工学的とか小難し理屈はわからないが、なんだか賢いプログラムのことらしい。
そしてこれからはAIの時代なんだとか。
猫も杓子もコレなしには回らないような仕組みにシフトしていく。
かつてパソコンが爆発的に普及して、「これからの会社はIT化だよ」とか当時の大人たちが訳知り顔にてのたまっていたのと同じような現象がふたたび。
ほかには、ブイチューバーなる新ジャンルも隆盛の一途。
二次元のキャラクターたちが三次元のリアルを席巻。
アナウンサーのかわりにニュースを読んだり、コメンテーターのかわりに意見を述べたり、アイドルのかわりに歌って踊って、芸人のかわりにみんなをどっと笑わせる。
イラストチックな絵柄にて、てっきりアニメの延長みたいに考えていたら、細かい動作や仕草をプログラミングして生成し、完成させるのに一体うん百万円もかかるんだとか。
それでもリアルの芸能人たちのように、私生活にてポカをやらかしたりしないし、初期投資にてあとは細々とバージョンアップをくり返すだけで、働かせ放題。労働基準法も適応外につき、残業代もかからない。休みをくれとも云わないし、こちらの要望にはすべて全力で応えてくれるとあって、各企業や地方自治体なんぞから制作会社に依頼が殺到しているんだとか。
なんとなく、かつて一世を風靡したゆるキャラブームの二の舞になりそうな予感がプンプンとするものの、時代の変化に遅れてなるものかとこぞって参戦するところが後を絶たない。
「この分だとじきに僕たちの仕事もなくなるかもしれないね」
そう言ったのはどこぞの売れっ子俳優。
そんなバカなと笑って受け流せないのが、昨今の実情。
たとえば企業が自社のコマーシャルのキャラクターとして採用していた芸能人が、薬物なんぞに手を出していたことが後々に発覚すると、その影響は企業の方にまで飛び火。悪いイメージが駆け巡り、業績に大打撃を受けるなんてこともある。
実際、シャレにならない被害を被って怒った企業が、その芸能人を契約不履行にてうったえて、莫大な賠償金を請求するなんてことも。
しかしたとえ裁判で勝ったところで、損失された時間もカネも労力も、元に戻ることはない。残るのは理不尽なレッテルばかり……。
「一度でもそんな目にあえば、そりゃあ二次元に走るよね」
そう言ったのは下校時のミヨちゃん。続けてこんな意見も口にする。
「でも中の人も、作っている人も、たいていはおっさんなんだよねえ。まぁ、それを言ったらアニメとかマンガとかゲームもそうなんだけど。とどのつまり世の中はおじさんとカネで回っていると、わたしは言いたいの。だからそろそろ『おっさんの日』も作ってあげるべきじゃないのかなぁ。みんなでがんばっているおっさんたちに、ありがとうって言ってあげるの。そして栄養ドリンクをあげるの」
近未来を予感させる話題から、まさかのおっさん。
急転直下にて、ドリフトキングも真っ青の曲がり具合。
メジャーのホームランバッターのバットですらも空を切るにちがいない変化。
これを受けてヒニクちゃんがおもむろに口を開く。
「それだと『もっと働け』の意にとられかねない」
みんなみんな頑張っている。新しい市場を開拓しては、仕事の裾野を
グングン広げている。なのにちっとも暮らしは楽にならない。
税金はあがる一方。いったい何が、どこの誰が足を引っ張っているのかしら。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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