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 今度のゴールデンウィークは十連休。
 休みはうれしい。だけれども、どこかに出かけるという人が、ほとんどいないのはミヨちゃんの教室。
 彼女の家はお父さんが仕事にて、通常運転。
 仲良しのヒニクちゃんのところはお父さんが出張中、人形作家のお母さんは日常が創作の連続にて世間の祝祭日はあまり関係なし。
 リョウコちゃんは所属しているサッカーチームの試合や練習などで、ほとんど潰れるし、家でどこかに出かける予定はない。逆に遠方に住む祖父母なんぞが泊まりで訪ねてくるとかで、その準備にお母さんがてんてこまいしているとか。
 チエミちゃんのところも、お父さんは通常シフトにつき、とくに変わらないという。
 もっとも休みだからとて、たぶん出かけない。だって連休中なんてどこも混んでいるし、料金も割高。そんなくたびれ損なんていやなので、せいぜいレンタル屋にて大量にシリーズモノのDVDでもかりて、ダラダラ視聴するぐらい。
 そしていかにも海外にでも家族そろって出かけそうなアイちゃんのところなのだが……。

「うち? お父さんは仕事、お母さんはイベントだし、お姉ちゃんも撮影がはいっているって」

 高校生にて読者モデルをしているお姉さんは、学校が休みのときこそ撮りダメのチャンス。
 ご両親にしても、ふだんよりもいそがしくなるぐらいで、家族旅行なんてとんでもないとのこと。
 他のクラスメイトたちも似たり寄ったりと、ふだんよりもむしろ地味なぐらい。

「あんがいこんなものよ。やれゴールデンウィークだ、長期休暇だとかメディアが騒いだって、世の中の半分の人は働いているんだもの。しょせんは上からの押しつけ文化。下々の事情なんてちっとも考えられてないし。社会のシステムを享受するのは、いつだって作った側なんだから」

 身もフタもない冷めたご意見のアイちゃん。
 自由に遊べる金がないから、庶民は毎日まじめにコツコツとがんばっている。
 なのに急に自由になる時間だけを与えられて、「さぁ、遊べ」と言われても、肝心のモノがないのでは、どうしようもあるまい。
 かといってお金を持っている人は、そもそも普段から上手に遊んでいる。

「そう考えるとダレトクなんだろうねえ」とミヨちゃん。

 休みはうれしい。
 うれしいけれども、ちょっと持て余す。
 休みが増えるだけならばウエルカム。だけれども、その分だけきっちりと学業のスケジュールのしわ寄せが後に押し寄せてくるし、ともすれば夏休みがガリガリ削られるのは、まったくもっていただけない。
 なんというか、中途半端なのだ。
 休むのならば、もっとドカンとみんなで休もうぜ! なんぞとミヨちゃんは語る。
 人手が足りないというわりには、やたらと二十四時間営業にこだわるコンビニエンスストア。
 お正月だというのに一日、二日から店を開けるスーパーやデパート。
 なんちゃらフライデーだのと言ったところで、ちっとも会社は解放してくれやしない。
 ノー残業とか言っても、仕事は家に持ち帰らされて宿題扱いにて、事実上のノーギャラ残業状態にて悪辣さがマシただけ。
 どうにも休み下手な国民性が目に余る。
 そして勤勉を尊ぶ思想を植え付け、みんなをこんな風にしたのも、またお上。

「どうせ、ゆとり教育と同じで、世間がようやく慣れた頃に、またてっかいするんだよ」

 ものすごーくありえそうな展開を予想したミヨちゃん。
 これを受けておもむろにヒニクちゃんが口を開く。

「ゴールデンウィークは昭和の遺産」

 ゴールデンウィークは映画の配給会社が発のシロモノ。
 これに政治と経済界がのっかっただけ。バレンタインと同じで、
 メーカーの作為臭がぷんぷんにつき、しょせんはこんなものだと思うの。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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