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298 カイロ
しおりを挟む世の中には見てはならないモノがある。
お母さんがこっそりとつまみ食いをしている場面だとか、お兄ちゃんたちがちょっとエッチなテレビ番組をみている場面だとか、酔っ払って帰ったお父さんが玄関先にてお母さんからしこたま怒られている場面だとか……。
街中だとイチャイチャしているカップルのキスシーンなんかも、見たらバツが悪くてしようがない。あと痴話げんかのシーンも。
ワンちゃんが大をしているところなんて、しげしげと眺めていたら、とっても困ったような、なんともいえない表情をする。
で、本日、ミヨちゃんがうっかり目にしてしまったもの。
それは担任のヨーコ先生の腰。
だらりとした上下の赤ジャージ姿。三十路手前にしてすっかり女としてのやる気を失くしつつ女教師がしゃがんださいに、ズボンがズレて腰のあたりがチラり。
ズボンをはいた女の人がやりがちな、まったくもって色気もへったくれもないと男性陣がちっともときめかないパンチラ。
だがそんなモノよりも、幼女が気になってしまったのは、お腰に張られたホカホカ使い捨てカイロ。
自分のおばあちゃんや、お母さんも愛用しているのは知っている。
だからとて、まだ若い先生が同じことをしていることに地味にショックを受けたのだ。
ウワサにて女性のカラダは冷えとの闘いとは聞いていたが、まさか独身貴族の頃から続いていたなんておもいもよらなかった。
しかも二枚も張らなければ耐えられないだなんて!
あまりにも過酷すぎる……。
「あんなのカチカチ山のタヌキだよ」
ミヨちゃんが臓腑のうちより、絞り出すような暗い闇を秘めた声にてグチる。
言い得て妙な例え。
それを受けて、うんうんとダマってうなづいていたのはヒニクちゃん。
ただいま、いつものように二人そろって仲良く下校中。
話に耳を傾けているかぎり、どうやらミヨちゃん的にはビジュアルがアウトらしい。
カイロを二枚背中に張っている姿を想像してみると、腰を痛めたお年寄りが湿布をペタペタ張っている姿を連想させられる。
酸いも甘いもかみわけたミヨちゃんのおばあちゃんだったり、上は大学生、中は高校生、下は小学生、と三人もの子どもを育てているミヨちゃんママとかだったりすれば、とくに違和感はないのだけれども、彼氏のいない独身女教師だと話がかわってくる。
たしかにクラスのおしゃれ番長のアイちゃんが知れば、激怒しそうな案件。
そんなことを考えていたら、ミヨちゃんがいくつかカイロあるあるを口にする。
「日中、カラダにペタっと張ってるでしょう? でもけっこう長持ちするから、寝るときには服からはがして敷布団にペタっとするんだって。そうすると朝までヌクヌクらしいよ」
「でも朝にはがすときに、横着してムリにひっぱると、ビリっと破けちゃって、布団の上に黒い粉が飛び散っそうじがたいへんなの」
「鉄の粉? っぽいらしくて掃除機で吸うとガリガリうるさいの。だからペタペタくっつくゴロゴロでとらないといけないんだ」
「レシートといっしょで、すぐに使い終わったカイロがどんどんたまるんだ。でもそうすると捨てるとき、すんごく重くなるの。ペラペラな見た目のくせに、けっこう重いんだ。あんまりためこむとゴミ袋の底が抜けちゃうから注意しないと」
やたら具体的なカイロあるある。
おそらくはヤマダ家にて実際に起こったことを、末娘のミヨちゃんが自分で目撃し、得た知識であるのだろう。
これらを受けて、おもむろに口を開いたヒニクちゃん。
「使い終わったカイロは、下駄箱に」
くわしい理屈は知らないけれども、ニオイや湿気とりになるそう。
なんでも脱臭炭のかわりになるんだとか。誰が思いついたのか
知らないけれども、イグノーベル賞クラスだと思うの。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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