上 下
272 / 1,003

272 動物愛護

しおりを挟む
 
 今週は学校をあげての動物愛護週間。
 べつに特別なことをするわけじゃなくって、日頃はあまり生き物に縁のない子たちも飼育係のお手伝いをして、アニマルたちを身近に感じようという企画。
 しかしこれを手ぐすねひいて待ちわびていたのは、チエミちゃん。
 容姿、能力、その他ものもろが平均値にすっぽりとおさまるゆえに、大多数の生徒たちの指針となりうることから、教師たちより裏で「偉大なる凡」と呼ばれる彼女は飼育係。
 この小学校では飼育小屋に頭突き魔の雄ヤギ、帝王パッソをはじめ、わりと狂暴なニワトリとかも多数いて、飼育係は子どもたちの間では人気ワースト一位の係。
 もちろんチエミちゃんもイヤだった。だがじゃんけん大会に負けて泣く泣く引き受けることになった。それからはもう聞くも涙、語るも涙の悪戦苦闘の日々。
 途中からミヨちゃんやヒニクちゃんの手を借りることを覚えて、多少は楽になったとはいえ、それでもつらいのにはかわらない。
 そんなつらい仕事を自分に押し付けたクラスメイトたち。
 チエミちゃんは密かにこのときがくるのをずっと待っていた。
 いまここに悪夢の一週間、復讐劇の幕が開く。

 少しは私の味わった苦労を思い知るがよいとばかりに、指導員という立場を利用して、次々とクラスメイトたちを窮地へと追い込むチエミちゃん。
 おかげで放課後の飼育小屋付近には、逃げまどう幼子らの姿が絶えることはなく、被害者続出。ケケケと悪魔の笑いがこだまする。
 気性が荒いパッソだが、さりとて小学二年生相手に頭突きをかますほど非道ではない。ただズズイと顔を近づけてのガン飛ばし。大きな顔のヤギ、その独特のギョロ目にてにらまれるだけなのだが、それでも十分の恐怖。その場で怖い思いをして、家に帰ってから夜に悪夢にうなされるという、二重苦がお約束のパターン。
 真っ赤なトサカの雄鶏に追いかけ回され、ケモノ臭にまみれながら糞尿の始末。
 うさぎとて、その愛らしい見た目からは想像もつかないほどの、住処の荒れ具合。
 人もケモノも数がそろえば、それはもはや立派な凶器。
 幼くしてアニマルらと共に生きるムズかしさを思い知る子どもたち。

 このように動物愛護週間だけれども、大量に動物嫌いの子どもをせっせと育てているような中にあって、一人さみしく小池のほとりに佇んでいたのはミヨちゃん。

「ミヨちゃんはそこでじっとしてて」

 チエミちゃんからそう言われて、しぶしぶそれに従っているミヨちゃん。
 なにせ彼女が飼育小屋に近づくと、動物たちが暴れてどうしようもなくなるので。それが当人もわかっているので、彼女もおとなしくしている。
 そんな幼女をなぐさめるかのように寄り添っているのはヒニクちゃん。
 と足下の池の縁に集まったコイたち。ビチビチとやかましい。
 産まれながらに動物には嫌われるけど、魚類には好かれるミヨちゃん。このナゾがいつか解明される日がくるのだろうか?

 することがないので退屈していたミヨちゃんとヒニクちゃん。
 ふと見たら、三人の男の子たちがウサギの鼻先にエサの菜っ葉の切れ端をぶらさげて、ホレホレとイジワルをしている姿が目に入った。
 これに憤慨したミヨちゃんが注意しようとしたら、それよりも先に正義の鉄槌が下る。
 スパン! スパン! スパン! といい音がして、男子たちが「いってー」とお尻をおさえている。
 ふざけていた男子たちを、リョウコちゃんが問答無用でケツキック。
 これを見たミヨちゃんが拍手喝采。
 そして男の子たちはチエミちゃんに引っ立てられて、パッソの刑に。
 ドナドナされていった男の子たちの背中を見送りながら、ヒニクちゃんがぼそり。

「飼育と調教、保護とエゴは紙一重」

 動物愛護ゆえに、動物(男子)をクリティカルヒット。
 アレはかわいいし、かしこいからダメ。でもこっちはバカで、
 数が多いからかまわない。動物愛護って何なのかしらね。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...