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258 日進月歩
しおりを挟むこの頃、よく目にする機会が増えたテレビ番組。
現役の医師たちが出演して、いろんな病気の解説をするモノ。気になるお年寄りたちの圧倒的支持を受けて、けっこうな視聴率を稼いでいるんだとか。
なにせ医学の進歩は日進月歩。
需要と供給との関係が途切れることがないので、話題にはことかかない。
次々と新薬や新しい検査方法、医療道具や治療法などが開発されており、それらがそろそろ命のロウソクの残りが気になっている人たちに、夢と希望を与える。
とはいえ本当に病気で苦しんでいる人、もしくは苦しんだことのある人ほど、あまりこの手の番組を見たがらないそうな。
何故なら自分が辛かったことを思い出すから。
せっかくテレビという娯楽を見ているというのに、そんなしょっぱい現実はいらない。
気がめいってしょうがないと、イヤがってお笑いやバラエティを好むんだとか。
ちなみにミヨちゃんのおばあちゃんも、そっち派。
なお笑いが健康にいいというのは、医学的にも証明されているらしい。
笑う門には福きたるというわけでもないけど、うつむき気落ちして背中を丸めているよりも、ガハハとやせ我慢でも笑い声をあげているほうが、精神が上向き、引いては体調も上向くとのこと。
で、お年寄りの知り合いがやたらと多いミヨちゃん。
自然と病気や体調のグチを耳にする機会が増えて、わりとそっち方面が耳年増。
また話を合わせるためにも、自分でも小まめに番組をチェックしている。
そんな幼女の注目を集めているのが、最新の歯の治療法。
彼女は歯医者さんが嫌いではないというか、むしろ好きというかわった子。
知り合いの歯医者さん(老人)が定期購読をしている、業界の会報誌を回してもらって読んでいる小学二年生なんて、たぶん彼女ぐらいであろう。
「液体の薬で虫歯のもとをとかしちゃって、なんこうみたいなぬり薬でなおすんだって。歯がムクムク再生するってすごくない? ぜんぜん痛くないって話だし。だけど保険外なんだよねえ。しょみんにはちょっと手が出ないよ」
下校途中に、ものすごく小学二年生らしくない話題を口にするミヨちゃん。
そんな話にもかかわらず、熱心にふんふんとうなづいていたのはヒニクちゃん。
二人は幼稚園からの大の仲良し。
「新しい歯医者さんだと、最新式だし知識も新しい。古い歯医者さんだと、いろいろと古いけど経験はほうふで実力もある。どっちがいいんだろう……、ちょっとなやましいよね」
そんなことを口にして、できればどっちにも行きたいとまで言うミヨちゃん。
麻酔が利きにくい体質のヒニクちゃんは、歯医者があまり好きではないので、ちょっと眉間にシワを寄せた。
そしてしぶしぶ口を開く。
「予防に勝る医療なし」
具合が悪くてお医者さまに相談しようと、地元の医院へ行く。
すると大きなところに回される。二度手間なのでとそっちに直接行ったら、
なんだか余計なお金を取られる。最新医療への道は遠いと思うの。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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