ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

256 マイガン

　
　お年寄りネットワークを駆使してミヨちゃんが大量に集めたのは、割り箸。
　空き缶とか空き瓶とかリボンとか、紙袋に包装紙とか魚の醤油入れとか、プリンとかの入れ物とか、みんな案外とっておくもの。
　だからちょっと声をかけたら、あっという間に百本単位で集まった。
　で、それらを集めて何をするのかというと、割り箸と輪ゴムをつかって、せっせとゴム銃を作成。
　図書室にて作り方のっていた本をみつけて、チャレンジ。
　ちゃんと物差しで大きさを測り、丁寧にパーツを切り分け、やすりで角を削り、表面をマジックなんかで色づけ、そうして出来上がった一丁。
　威力や飛距離はさほどでもない。
　それでもセットした輪ゴムが、トリガーを引いたらピョンと飛んでいく。
　狙いも甘いが前にはちゃんと飛ぶ。
　紙コップを的にして、バンバンやれば、なかなか当たらないけど、これはこれでなんだか楽しい。

　そんなとっても女の子らしくない遊びに興じていたミヨちゃんとヒニクちゃん。
　ゴム銃片手に公園で遊んでいたら、近寄ってきたのは男の子たち。
　だけど反応はさまざま。
　面白そうと指をくわえている子もいれば、露骨に鼻でバカにした子も。なにせその子の手にはわりと威力のあるモデルガンが握られていたから。
　小学校低学年なので、ガスで発射するような威力のあるモノではないけれども、銀玉鉄砲よりはグレードがずっと上。造りも本物っぽくてかっこういい。
　そんな品を手にしている子からすれば、ミヨちゃんたちのモノなんて、竹やりみたいなもの。

「だっせー」と小馬鹿にする男の子。

　だがこれに対してミヨちゃん。「フッ」と失笑。
　これにカチンときた男の子、「何がおかしい！」と喰いついた。

「ちっ、ちっ、ちっ。あんたは何もわかっていない。見た目がダサい。だから何？　これはわたしの手による、わたしが作った、世界にひとつだけのわたしだけの銃。でもあんたのはおカネさえだせば、だれでも持てるモノ。しかも親のカネで手に入れたもんだ。そんなもんが本当にあんたの宝ものなのかい」

　ひとさし指をつきつけられて、ビシッと言われた男の子。
　とってもいいことを云ったミヨちゃん。だが後半の部分は少女マンガの中の台詞のまるパクリ。
　しかし相手の男の子はそんなこととはつゆ知らず、なんだかとってもショックを受けたみたい。かわいそうに。幼女の適当を真に受けて、どうやら手の中の品が、とたんに色あせてしまったよう。
　そんな罪つくりな女を横目に、ヒニクちゃんがぼそり。

「子どもの宝物って、だいたいガラクタ」

　ひと夏かけて、集めに集めた箱一杯のセミの抜け殻。
　ビンの王冠、牛乳のふた、人気のコインやカード、シールに消しゴム。
　ヘンな形の石、貝殻などなど。まぁ、価値観は人それぞれだと思うの。
　……なんぞと、コヒニクミコは考えている。