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245 すぐそこにある危機
しおりを挟む「そんな凶状持ちの親の娘なんて、うちの嫁にはぜったいに認めないよ!」
「彼女は関係ないじゃないか! それにアレだって本当は……」
なんてことから始まる愛と辛苦の時代劇。
主演のヒロインがさまざま逆境に挫けることなく、努力と根性と愛嬌で周囲に信頼と絆を築いていき、ついには意中の彼と結ばれるという物語。
なお凶状持ちとは罪を犯してしまった人のこと。
下校の途中にて、この話題を持ち出したのは、性格の良さが災いして、なにかと級友たちからは雑事を押しつけられ、クラスでもお人好しで通っているミヨちゃん。
少女マンガや二時間サスペンスドラマ、警察密着ドキュメントの他に同居している祖母の影響にて時代劇も大好きっ子。
ひと昔ばかり前どころか、さん昔ばかり前にテレビで放送されて、当時は好評をはくした作品。
この全三百話を越える大長編のDVDボックスセットを、友人より押し付けられるかのようにして貸し出されたミヨちゃんのおばあちゃん。
借りたからには少しぐらい見なければと、しぶしぶ視聴しはじめたのだけれども……。
祖母、義娘、孫娘、ヤマダ家の女たちがみなハマった。
いまでは毎日、三人そろって仲良くコツコツと話数を消化している。
そんなわけでミヨちゃんもテレビを前にして、周囲からの理不尽に打ちのめされても、ちっともへこたれない、ド根性ヒロインに声援を送っている今日この頃。
で、冒頭の台詞なのだが、幼女は何ごとかが引っかかっているよう。
「ヒロインのお父さんが、人を死なせちゃったの。あきらかに事故なんだけど、あれよあれよという間に死罪に。どうにも怪しさプンプンなんだけど、それはともかくとして」
えっ! そこすごく気になるんだけどとヒニクちゃん。おもわず能面女子の片眉がピクリと持ちあがる。ですがミヨちゃんの話の腰をおるわけにもいかず、ここはぐっと我慢の子。
「子どもの罪は親の罪っていうけれども、その逆ってどうなのかなぁ、とか思ったの」
だって子どもに親を選べないもの。
大人ならば子どもの過ちを止めたり、叱ったりできるけど、逆はちょっとムリじゃないかなぁとミヨちゃん。
子どもがある程度、大きくなっていたのならばまだしも、ほんの赤子の頃とかだったら、どうしようもないよね? それなのに延々と責められるのは、どうにも納得がいかないらしい。
これはなにもドラマの中だけの話ではない。現実社会においても往々にしてあること。
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だけど、なんとなくそういう行動に走ってしまう人々の気持ちもわかってしまうからこそ、ミヨちゃんはおおいに悩んでいたのである。
するとここで、おもむろにヒニクちゃんが口をひらいた。
「死罪? 刑は執行済み? ならば問題なし」
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……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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