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238 習い事
しおりを挟む学校が終わるとそそくさと帰るクラスメイトがいる。
放課後には習い事があって、ゆっくりとしていると間に合わないから。
そんな面々をつぶさに観察していると、二つに分類されることに気が付いたのは、キャラメル色のくせっ毛のはしがピョンとはねているミヨちゃん。
無料で体験できるピアノ教室やバレエ教室、英会話教室に体操教室、習字やソロバン塾なんかを一通り試したものの、いまのところ保留している小学二年生。
そんな幼女が発見したのは習い事におもむく子どもらの表情の違い。
ピアノやバレエ、ダンスなんかに通っている子たちは、授業が終わるのを待ちわびているかのようにして教室から飛び出していく。
サッカー少女のリョウコちゃんもこの類。実にイキイキとした表情を見せて、それはそれは輝いており、とってもステキ。
きっと習い事が楽しくて楽しくてしょうがないのだろう。
問題はもう一方。
ホームルームが終わって、いそいそと教室を出るのは同じ。
だがその足取りはとっても重い。背中も丸めており、どことなくダルそうな気配を漂わせている。まるで一日の仕事を終えてくたびれて帰って来るお父さんみたい。
その姿に小学二年生らしい若さはない。
で、そんな子らが通っているのは、学習塾とか英会話が大半。しかも他にも習い事をかけもちしている子までいる。
地道な聞き取り捜査にて、これらの情報を集めたミヨちゃん。
集めた情報をもとに、彼らの一週間のスケジュールを書き出してみて、ビックリ!
ちょっとした売れっ子芸能人みたいな生活を送っているのだもの。
このような調査結果を下校時、仲良しのヒニクちゃんに披露したミヨちゃん。
「習い事のおカネって、月一で考えても、みっつ習ったら三万円だよ。お父さんのおこづかいがとんじゃうよ」
ミヨちゃんの発言から、どうやらヤマダ家の家長の月々のポケットマネーは三万円のよう。
小学二年生の末娘にふところ具合を知られている父親。
それってどうなのかしらと思いつつも、無粋な発言は控えるヒニクちゃん。
静かにミヨちゃんの意見に耳を傾けている。
「しかも必要な道具とかそろえたり、バスや電車で通ったりしてたら、もっともっとおカネがかかっちゃう。それでもスキならいいけど、イヤイヤとかだったら、けっこうもったいないよね?」
自分がやりたくて通う習い事ならいいけれども、親に押し付けられた習い事はどうなのか。いくら子どもの将来のためとはいえ、果たして身につくモノなのかしらと小首をかしげるミヨちゃん。
すると長らく閉じられていたヒニクちゃんの口がおもむろに開かれた。
「人はいくつになっても夢を見る生き物」
子どもの頃には、自分の将来に想いを馳せる。
子を持つ親になったら、自分の子どもの将来に想いを馳せる。
でも、だいたい親子って悪いところばかり似がちだと思うの。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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