229 / 1,003
229 財宝伝説
しおりを挟むいつもように仲良く下校していた二人の女の子。
今日はちょっと公園に寄り道。
荷物を置いて、ジャングルジムによじ登る。
理由はとくにない。なんとなく高いところに行きたくなっただけ。
そんな気分の日も、たまにはあるよね。
風にゆれるキャラメル色のくせっ毛の髪をかきあげたのは、ミヨちゃん。
天辺付近に陣取り、ちょっと遠い目。ちなみにコレもなんとなく。とくに深い意味はない。
ミヨちゃんが居る場所から一段下がったところにて、ジャングルジムの格子に体を絡めるような格好にて、だらりとしているのはヒニクちゃん。
昔からあった公園のジャングルジム。
ほんの少し前に過保護な大人たちの勘違いによって、「危ないから、撤去しましょう」という流れが起こる。しかしこれに子どもたちが怒った。
アレもダメ、コレもダメ。もう、うんざり! と。
たしかに公園の遊具による事故はある。うっかり大怪我をおったり、なかには不幸な事故が起こることも。だからといって即座に排除というのは、あまりにも短絡が過ぎる。
大人たちは「あなたたちのためだから」というお題目をすぐに掲げるが、それが表向きの理由でしかないことに、子どもたちはとっくに気がついている。
大人たちの本音は「何かあったときに、責任を押し付けられたら困る」ということ。
つまり自己保身である。
子どもは、大人のそういうイヤな部分には、かなり敏感。
で、けっこうな騒ぎとなり、最終的には補修を施し、定期的に安全点検をすることに落ち着く。
ところどころ剥がれ落ちていた青いペンキは、キレイに塗り直されて、新品同様となり、子どもたちの城は守られた。
ジャングルジム城、かりそめの女主人となったミヨちゃん。
天辺からの景色を眺めつつ、口にしたのは財宝伝説のこと。
昨夜、テレビで放送されていた。
大海賊が宝を埋めたとの伝説が残る無人島を大捜索したドキュメント。
金属やら超音波の最新の探知機、重機などを持ち込んでの宝探し。
怪しげな洞窟、人の手が加わっているっぽい岩、不自然な地層、掘り進めると姿を現す謎の横穴……。
新たな発見があるたびに、ちゃららーと番組のテーマ曲が流れて、場面を盛り上げる。
まぁ、なんだかんだで、けっきょく、何も見つからないのだけれど。
もしも本当に宝が出てきたら、とっくに大ニュースになって世界中を駆け巡っている。
そんなことは幼い視聴者だって百も承知。わかっていてお祭り騒ぎに付き合っているのだ。
「見つかったら、じか一千おくなんだって。すごいよねえ」とミヨちゃん。
謎の財宝なのに、どうして価値がわかるのか? などという無粋なことは言わないヒニクちゃん。
しばしミヨちゃんの夢と欲望にまみれた話に、じっと耳を傾けた後に、おもむろに口を開いた。
「財宝伝説、島そのものがお宝の可能性、大」
一等地だと、坪単価うん千万円どころか、億越えもあるとか。
江戸間の畳、二畳分ほどでこの価格。バブル景気が弾けてもおかまいなし。
ひょっとしたら土地伝説は、ずっと昔から存在していたのかもしれない。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
小児科医、姪を引き取ることになりました。
sao miyui
キャラ文芸
おひさまこどもクリニックで働く小児科医の深沢太陽はある日事故死してしまった妹夫婦の小学1年生の娘日菜を引き取る事になった。
慣れない子育てだけど必死に向き合う太陽となかなか心を開こうとしない日菜の毎日の奮闘を描いたハートフルストーリー。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる