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202 現状
しおりを挟むカンカンカンカン。
鉄を叩くような音がしたと思ったら、「こらっ!」と怒鳴る女の人の声。続いて歓声をあげながらタタタと逃げて行く男の子たちの姿。
どうやら落ちていた枝にて、家の柵にイタズラをしたようだ。
子どもらにちょいちょい悪さをされるのは、通学路にある家の宿命みたいなもの。
とはいえ、あまりヒドイ場合にはバッチリと学校に連絡がいって、御用となる。
「男の子って、しょうがないよねぇ」と言ったのはミヨちゃん。性格の良さが災いして、なにかと級友たちからは雑事を押しつけられ、クラスでもお人好しで通っているけど、優等生然として、男子をしかったりはしない。だって、あの子たちって、いくら言っても聞かないもの。
隣にてコクンとうなづいて見せたのはヒニクちゃん。男子については特にコメントなし。
とっても仲良しの幼女二人は、今日も並んで下校中。
土手の遊歩道から河川敷で行われていた草野球をちょっと見学し、陸橋の橋げたのところに集まってごちょごちょしている制服姿の男子学生らの集団に胡乱気な視線を向け、住宅街にて先のイタズラに遭遇。そろそろ商店街へとさしかかったところで、手前にある交番にて、悪い人たちの顔写真が貼られている掲示板に目を通す。
情報化社会、一億総カメラマンとか言われているわりには、捕まりずらい逃亡犯たち。
それでもお巡りさんたちの懸命な働きによって、ちょこちょこと事件は解決している。
「あっ! つかまったんだ、こいつ」
心優しき幼女から、「こいつ」呼ばわりされたのは、多くのお年寄りにリフォーム詐欺を仕掛けて、多額の金銭を奪っていた悪党。逮捕直前に金庫から有り金を持って逃亡。それ以来、行方不明となっていたのだが、目出度くお縄になったようで、ミヨちゃんもちょっと溜飲を下げた。だけど……。
「この手の事件って、ほとんどお金がもどってこないんだって。ひどいよね」
盗られたお金は返ってこず、刑期にしたって、ほんの数年。そしてこの手の詐欺野郎は同様の手口をくり返す傾向にあるという。
理不尽なやられ損に、たいそうご立腹なミヨちゃん。
「ひどいと言えば、車ではねたら事故で、ナイフでさしたら殺人なんでしょう? お酒とかイケないクスリとかで、フラフラだとバツがへらされるとか、意味わかんないよ」
他人の人生を踏みにじった犯人に優しく、被害者に厳しい、現状に幼いながらに義侠心を燃やすミヨちゃん。もしも自分の知り合いの老友達らが、ヒドイ目に合わされたら、ちょっとヤっちゃうかもとか言い出したところで、幼女らの背後を選挙カーが通過する。
そちらをチラ見したヒニクちゃん。おもむろに口を開く。
「世に悪事は尽きぬ」
悪質ドライバー、詐欺同然の行為、罪のわりに軽い処罰などなど。
ふしぎと誰も反対していない法改正に限って、遅々として進まないのよね。
どうでもいいモノは強行採決とか、平気でやるくせに。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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