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195 もどき
しおりを挟む楽しい楽しい給食の時間。今日はカラアゲ。
子どもたちは班ごとに分かれて、机を向かい合わせて、ワイワイと歓談しながら食事中。
「このごろ、緑の汁をのんでる」
なんて、小学二年生にそぐわない発言をしたのはミヨちゃん。
家におばあちゃんがいて、自身も近在のお年寄りらとの間に、強固なパイプを持つ幼女は、健康食品やサプリメントなんかをお裾分けされる機会が多い。
とくに季節の変わり目になると、体の不調を訴える人が増えるせいか、この手の品が周辺に出回る。チリも積もればではないが、おかげでヤマダ家では、この消費に追われているそうな。
なお緑の汁とは、緑黄色野菜の粉末を水で溶いたモノ。効率よく必要な野菜の栄養素が吸収できて、食物繊維もたっぷり、コラーゲンも入ってるからお肌もピチピチ、との謳い文句の品。毒々しい見た目に反して、味はお子ちゃまの舌でも平気な甘さ。
「私は飲んでないけど、うちの家族はみんなサプリとか飲んでるわね」
マルチビタミン、コラーゲン、アミノ酸にカルシウムなどなど。
ファッション一家であるアイちゃんのところは、全員が美意識高め。仕事が忙しいわりには、食事にも手を抜かないお母さん。読者モデルの高校生のお姉さんも、夜更かしは絶対にしないという。お父さんもあまり外食はしないらしい。
てっきり週末ごとに高級レストランで、フランス料理とかを食べていると思っていたのに。派手なオシャレ家族のわりに、案外、家庭的な一面を知って、意外そうな顔をする班の一同。
「あたしのところはないかなぁ。あっ! そういえばお母さんが、化しょう品のサンプルセットとかをもらってたっけか。なんか風呂あがりに鏡の前で、バシャバシャ、ぱんぱん、やってたな」
リョウコちゃんのところには小さな弟がいる。やんちゃ盛りにつき、大人の食べ物にも興味津々。なんでも口に入れたがるから、うかつに目の前で薬も飲めないとのこと。だからサプリとかはナシ。タブレットのモノなんて置いておこうものならば、お菓子と勘違いしてボリボリ食べられてしまう。
「私のところはお腹のヤツを、みんなで飲んでるよ。もともとお父さんのお腹が弱かったから飲みはじめたんだけど、気がついたら家族みんなで飲んでた。おかげで調子いいんだ」
チエミちゃんのところは、一家揃って整腸剤のお世話になっているらしい。
むくむく増えるヨーグルトとかも試してみたが、毎日毎日、同じモノを続けて食べるのは、けっこうキツイ。料理とかに使えればいいのだが、それとて限度がある。食べなきゃ増える。放っておいたら傷んでダメになる。最後の方には持て余したお母さんが、軽いノイローゼになったので廃棄処分。手軽に飲める整腸剤に落ち着いた。
糖質を制限するローカーボ食品や、カロリーを抑えるための工夫、代用品の話なんかも飛び出して、果てはダイエットにまで話が及ぶ幼女たち。
それぞれの家庭をとりまく事情を聞いてミヨちゃん。
「本物よりヘルシーで味もいいんだったら、ぜんぶソッチにすればいいのに」
するとこれまでじっと聞き役に徹していたヒニクちゃんが、おもむろに口を開いた。
「なんだかんだで、バランスのいい食事にはかなわない」
いろいろあるけれど。その一番の効能って、たぶんプラシーボ。
イワシの頭も信心から。ちなみに、いま、みんなが食べてるのって、
オカラで作ったカラアゲもどきだから。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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