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160 名前
しおりを挟む差し出された大根を、シャクシャクと丸かじりするゾウガメ。
コヒニ宅の庭の家庭菜園にて、収穫したばかりのもの。
採れたては、みずみずしさが違うのか、目を細めてうれしそうな表情をみせるポン太。
その姿にちょっと好奇心がうずいたのか、大根をパクリとひと口したのはミヨちゃん。
本日は収穫のお手伝いにお邪魔していたのだが、とたんに「げぇ!」といって吐き出した。どうやら辛口だったらしく、舌を出してはひーひー言っている。
ヒニクちゃんが差し出したコップのお茶を、グビグビ飲み干し、ようやく一息。
「うー、まだ口の中がじんじんする。ポン太は、よくこんなの平気で食べられるねぇ」
首をにょきっと伸ばしては、景気よく大根をバリボリしている姿に感心するミヨちゃん。
試しにヒニクちゃんも、大根の断面をペロリとするも、すぐに顔をしかめた。幼女にはいささか刺激が強すぎる。これは大人の味だ。
「そういえば、このまえテレビで大根とハチミツをあわせたのが、お腹にいいって言ってた」
ミヨちゃんの言葉を受けて、ちょっと試してみる二人。台所からハチミツの入った容器を持ってきて、これを大根にかけてガブリ。
甘味が先に立つので、しばらくは平気だったが、かむほどにハチミツの風味は薄れてゆき、猛烈な追い上げにて大根の自己主張が激しくなっていく。
結果として、二人とも「ぺっ」と吐き出した。
「お腹によくても、コレはムリ」
ミヨちゃんの意見に、コクンとうなづいて見せたヒニクちゃん。
なお情報の捕捉をしておくと、すり下ろした大根や汁に、ハチミツを混ぜるのが正解。おろしリンゴのようになって、食物繊維や栄養を効率よく摂取できるとされている。
気を取り直して、収穫した大根たちを水洗い。
ゴシゴシと優しくこすると露わとなる白肌。
スラリとした大根片手に「おおっ、まるでリョウコちゃんの足のようだ」と口にするミヨちゃん。幼女的には誉めてるつもりだが、当人が耳にしたら、きっと泣く。
そんな幼女が作業中に、ふと、思いついたのは、何故だか「白ブタ」について。どうやら白い大根から発想を飛ばしたらしい。
「女の人にブタっていうのは、しつれいだよね」
そう言ったミヨちゃんに、うなづいて同意するヒニクちゃん。
「でもブタに女の人の名前をつけるのは、いいんだよね。逆ならいいって、ちょっとふしぎ」
飼われているブタに、名前をつけている人は確かにいる。ブタに限らずペット全般にて、それは当てはまるだろう。
可愛がっているのはわかるのだが、同じ名前の人は、どんな気持ちなのだろうかと、ミヨちゃんは考えた。
すると長らく閉じていたヒニクちゃんの口が、おもむろに開く。
「ギリギリセーフ」
でも人前では、ちょっと呼び辛いかと。
あとわざと嫌いな人の名前をペットにつけて、ストレス発散なんて話も。
でも飼ってるうちに愛着がわいて、逆効果のような気がすると思うの。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
ちなみにポン太の名前の由来は、甲羅を叩くとポンポンと音がするから。
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