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111 セミプロ
しおりを挟む性格の良さが災いして、なにかと級友たちからは雑事を押しつけられ、クラスでもお人好しで通っているミヨちゃん。
そんな心優しい幼女が、めずらしくプンスカと怒っている。
下校中のことだ。
彼女は友達に、このあいだ親戚の家に行ったときのことを話していたのだが、その時のことを思い出して、機嫌を損ねていたのである。
週末、ほぼほぼ赤の他人にも等しい遠縁のオジさんのところの法事に、祖母に連れられて参加したミヨちゃん。
初めてみる景色、初めて行く場所、初めて会う人、初めて尽くしにつき、興奮と不安が隠し切れないものの、持ち前の人懐っこさにて、じきに場に馴染んだが、どうにも馴染めぬモノもあった。
それが遠縁のオジさん。
かなり偏屈な性格にて、時代錯誤な老人。男尊女卑が染みついているらしく、それは幼女相手でもチョロチョロおかまいなしなものだから、さしものミヨちゃんもゲンナリしてしまう。
どうやらおばあちゃん、自慢の可愛い孫娘ならば、あるいは頑な爺いの心も少しはほぐれるかと期待して連れてきたのだが、相手は筋金入りだった。
結果は散々。男の子と女の子ならば男が大事。同じ男の子ならば長男が第一、それ以下はオマケのような扱いと、とにかく贔屓と差別がヒドイ。
あまりにも露骨な態度。これには他にも参加していた子どもたちも、プンスカ頬を膨らます。
女性陣をまるでお手伝いか何かと勘違いしているのか、当たり前のようにアゴでこき使う老人の態度も不快であった。
見かねた人がそれとなく注意するも、どこ吹く風にて、悪びれた色もない。
そんな様子が、また小憎たらしいったらありゃしない。
万事がこんな調子なので、場はなんとなくシラケて、寒々とした雰囲気。どうにも居心地が悪く、参加者らの口も自然と重くなる。
そんな中で、ついに事件が起こった。
オジさんが法要のために来てくれたお坊さんを、怒鳴りちらして、追い返してしまったのである。
「クソ尼なんぞ、お呼びじゃねぇ! ちゃんとした坊主を寄越しやがれ」
その日、この周辺を檀家に持つお寺の住職の体の具合が悪く臥せっており、急遽、応援にかけつけてくれたのが、この尼さんであった。
仕事の引継ぎに際して、申し渡しに不備があったようで、問題のある家の情報が抜けていたから起きた悲劇。
しかしいくら気にいらないからとて、わざわざ足を運んでくれた相手に浴びせる言葉ではない。
で、結局、法事はお坊さんなしにて、年長者の中でお経が唱えられる人にお願いして、なんとか行ったという次第。
この話をしているうちに、ミヨちゃんの中で怒りが再燃。地面をダンダン、地団駄を踏む。
植物やモノに当たらないのが、いかにも彼女らしい。
しかし、ふと、横を見ると、ヒニクちゃんが顔を背けて、小刻みに肩を震わしていた。これは彼女が笑いを堪える際の仕草。
いまの話のどこに笑える要素があったのか? 小首をかしげるミヨちゃん。その拍子にくせっ毛のはしが、ピコっとはねた。
ボソリとヒニクちゃんが、プププとつぶやく。
「アマじゃなくてプロをよこせ」
時代錯誤の男尊女卑は論外。
だけどそんな人に限って、一人になったとたんに、
メソメソ、しんみりしちゃってると思うの。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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