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66 子どもの国
しおりを挟む近年、少子化が進んでおり、老人が増えて、高齢化が進行中。
逆転した人口ピラミッド。税収は減る一方で、医療費はかさむばかり。
優良企業ですらが、人手や後継者不足にて、畳んでしまうなんて話もあるほど。
政治家らが実績として声高に叫ぶ、景気回復の恩恵は、数字ばかりで、まったく市井には降ってこず、実態をともなわないモノばかりが、世の中に増えていく。
我が国は、かなり大ピンチ。
なのに国が投入するお金も手段も、ぜんぜん足りてない。ところによっては国家存亡の危機と捉えて、何倍もの予算を投入しているというのに。
ちょびちょび、その都度に手段を講じるから、根本的な解決には至らず、焼石に水の状態なのが現状……。
と、いうようなお先真っ暗な話を、社会科の授業中にしたヨーコ先生。
「みんなは、どうしたらいいと思いますか?」
「はい! 先生がけっこんする」
男子生徒の一人が元気よく答えて、ドッと教室中が沸く。
なんとなく、こんな返しがあることを予想していたのか、三十路手前のヨーコ先生は大人の余裕にて「そうですね。いい人がいたら紹介して下さい」とニッコリ受け流す。
生徒からの心ないひと言で、いちいち動揺なんてしていたら、教師なんてやっていられないのだ。そういうのは帰りのコンビニで買ったワンカップにて、グビグビ呑み干して忘れるにかぎる。
「子どもを大切にする」「育てやすいようにする」「生活をおうえんする」「お金をあげる」「ただでお医者さんにみてもらえるようにする」などなど。
生徒たちが、幼いながらに真面目に考えた対策を披露していく。そんな中で「カップル公園をふやす」との意見を述べたのはミヨちゃん。性格の良さが災いして、なにかと級友たちからは雑事を押しつけられ、クラスでもお人好しで通っているけど、みなに愛されている小学二年生の女の子。
ちなみにカップル公園とは、地元の若い人たちに人気のある公園のこと。照明の具合とか雰囲気がよくて、夕方になると連れだった男女がちらほら。デートスポットに早変わりする場所のこと。
だいたいの意見が出尽くしたかと、教室内を見渡すヨーコ先生。
そもそもこんな小学校の片隅にて、本気で社会問題が解決するだなんて、彼女も思ってはいない。あくまで問題提起につき、物事に注意を向けたり考えたりするキッカケになればいいとの考え。
そろそろ話をまとめようかという時になって、ふとヨーコ先生の視線の先に映ったのはヒニクちゃん。極端に無口な性質にて、自分から手をあげるようなことはない。たまに口を開けば、わりとキツイことを言うので、密かにその発言にはみなの注目が集まることを知っている先生は、ちょっと好奇心にかられた。
彼女に声をかける。
すると長らく閉じられていたヒニクちゃんの口が、おもむろに開く。
「移民受け入れ。ただし女性多めで」
女がいないと社会の活力が減る。
ニワトリが先か? 卵が先か?
でも育てるのが楽なのは、どう考えてニワトリだと思うの。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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