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65 男と女

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 小学校の昼休み、子どもたちの行動は、おおむね二種類に分かれる。
 校庭に出て遊ぶか、校舎内に残るか。
 外で遊ぶ子たちは場所取りのために、給食を急いで平らげ、一目散に飛び出していく。
 基本的に早い者勝ち。学年の上下は関係なし。被った際には仲良く遊ぶのが、この学校での暗黙のルール。代々受け継がれているこの掟を破って、もしも上級生風を吹かせようものならば、とっても恐ろしいことが起こると云われている。
 ちなみに場所の一番人気は、サッカーのゴールポスト周辺、二番目がコンクリートマウンテン。公園のヤツとは違って滑り台もなく、土管のトンネルもない。表面にボコボコと突起物が埋め込まれているだけの愛想のない遊具。
 しかしこの限られた場所で行われる鬼ごっこ遊びが、生徒たちに大人気。疑似閉鎖空間での疑似デスゲームのスリルに、みんな夢中。

「みんなゲンキだねぇ」

 教室の窓辺にて、まったりと過ごしながら、外の様子を眺めていたのはミヨちゃん。給食にてすっかり腹が満たされて、ちょっと眠気に襲われてピンチの小学二年生。
 隣で同じく、ぼんやりと過ごしていたのはヒニクちゃん。満腹時の胃が重たい感じが苦手な彼女は、腹八分がモットー。ゆえに午後の気だるさに襲われることもなく、余裕。

 教室内は閑散としている。
 ちょっと歪んだ机の列、後ろの壁に飾られた習字の半紙、熱帯魚の入った水槽のポンプがぽこぽこと微かに音を立て、カーテン越しに差し込む黄ばんだ陽光が、アンニュイな空間を生み出す。

 遊びに行ったり、お手洗いに行ったり、当番や委員の用事だったりと、わりと子どもたちは忙しい。放課後は放課後で、習い事なんかもあるから、学校の友達と過ごせる時間は限られている。それを惜しむかのように、みんなせっせと互いの時間の隙間を埋めていく。
 だからこそ、ミヨちゃんとヒニクちゃんが、こんな風に過ごせる機会は珍しかった。

「そういえば、男の子と女の子の数が同じぐらいだけど、本当のところ、どっちが多いのかな?」

 どこのクラスもだいたいが、男女で半々に調整されている。
 でも、どうしてそんなに都合よく数が揃うのか、ちょっとふしぎに思ったミヨちゃん。
 すると長らく閉じていたヒニクちゃんの口が、おもむろに開いた。

「たぶん女の人の方が多い」

 商店街、ショッピングモール、映画館、レストラン、衣料品店……。
 そこかしこで見かけるのは、女の人ばかり。
 女性専用のサービスが目につくし、きっとそうだと思うの。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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