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39 迷える子羊たち

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 二人の小学生の女の子らが下校途中でのこと。
 とある宗教系政治団体が街頭演説を行っていた。
 昨今の薄情な政治に対する文句だけでなく、彼らの宗派の教義なのか中絶反対なども訴えている。まあ、それなりにイイことも口にしていたので、そこそこに足を止めている聴衆たち。
 それらを尻目に、テクテクと女の子たちは家路をゆく。

 夕方の賑わいを控えた商店街にて、電気屋さんの前を通りがかる。
 電話一本で駆けてけて、いろんな相談にのってくれるので、周辺のお年寄り連中から頼りにされている街の電気屋さん。噂ではけっこう稼いでいるらしい。
 そのせいか店先には最新式の大きなテレビが飾られてある。
 ショーウンドーのテレビ画面にて、紛争地域での様子が大迫力にて映し出されていた。
 戦闘機が轟音にて飛び、戦車が我が物顔にて街中を走りキャタピラが土煙をあげ、背景のそこかしこに瓦礫が散乱しており、建物の壁に残る銃弾の痕が生々しい。
 いくつもの宗教が聖地を巡って、気の遠くなるほどの時間を争っている土地。
 なんとも悲惨な光景。
 そこに参戦している宗教の一つが、さっき街頭演説をしていたところの母体となる団体。
 これに小首をかしげたのはミヨちゃん。性格の良さが災いして、なにかと級友たちからは雑事を押しつけられ、クラスでもお人好しで通っている、心優しき小学二年生。

「命はたいじにって、さっき言ってたのに……」

 産まれてくる命は尊い、そう主張する一方で、戦争に加担してはムダに命を散らす。
 宗教が持つ二面性。おおいなる矛盾を前に悩めるミヨちゃん。
 幼心に、「みんなで仲良く住めばいいじゃない」と考えている。
 するとその親友の想いを察したのか、おもむろにヒニクちゃんが口を開く。

「アレは拡大解釈の悪い見本」

 どんどん増やして、どんどん浪費。世はまさに大量消費社会の時代。
 怨嗟が積もるほどに価値を持つ、とっても不思議な事故物件。
 信仰は人生の潤滑油だけど、さすがにこれは違うと思うの。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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