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38 葬々

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 数年に渡る闘病生活の末に亡くなった俳優の葬儀。その模様がテレビのワイドショーにて生中継にて放送されていた。
 告別式は盛大に行われ、会場に詰め掛けた数百人にも及ぶ参列者たちが、故人との別れを偲んでいる。
 厳かな雰囲気の中、友人たちの中から特に親しかった大物俳優が、代表で弔辞を行う。
 故人との数々の思い出話に始まり、早すぎる別れを惜しみ、残された者の寂しさを切々と語る。彼の言葉は弔問客たちの涙を誘った。

 葬儀の放送をテレビで見ていた二人の女の子。
 あまりにも感動的な弔辞に、とくにファンでもないのに、思わずもらい泣きをしそうになっているのは、性格の良さが災いしてか、なにかと級友たちから雑事を押しつけられ、クラスでもお人好しで通っているミヨちゃん。感受性が強いのか、涙腺はゆるめな小学二年生。
 そんな彼女の隣に座って無言にて一緒にテレビを見ていたのは、クラスでも無愛想で通っているのだが、ここぞという時に、たまにピシャリと毒を吐くので、級友たちのみならず、先生たちからも密かに注目られているヒニクちゃん。近々で泣いたのは、うっかりワサビ入りのお寿司を食べてしまったとき。

「すごい数のお客さん……、やっぱりビッグはちがうねえ」

 たたみ二畳分はあろうかという大きな遺影。どこから集めてきたのか不思議に思うほどの、大量の白い菊に埋め尽くされた壮麗な祭壇。アリの群れのように連なる、数百人にも及ぶ弔問客の行列。
 ほへー、と感心しきりのミヨちゃん。

「あっ! あの人、ドラマで見たこともある。キレイなモデルさんとか、歌合戦にも出ていたエンカの人とかもいるよ。すごいなぁ」

 まるで芸能人博覧会のような葬儀の様子は、テレビっ子である彼女の好奇心を刺激するには、あまりある光景であった。
 画面に映し出される葬儀が、同期の大物俳優の弔辞のスピーチの段となり、「なんて感動的な別れの言葉なのかしら……。まるで映画のワンシーンみたい」と感極まって涙ぐむミヨちゃん。
 彼女のほどよい高さの鼻が、スンスンと鳴り始め、今にもぐすんと泣き出しそうになったところで、おもむろにヒニクちゃんが閉じていたその口を開く。

「葬儀の立派さは、故人の生き方とは関係ない」

 立派な葬儀、たくさんの花にお墓、死んでからチヤホヤされても。
 悲しむのは生きている人だけの特権。
 死んだら感情もへったくれもないと思うの。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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