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29 ヨメ

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 公園は人生の縮図を映す鏡。
 砂場にて、ママごとに興じる子どもらの姿を見ていれば、彼らの家庭のおおまかなことがわかってしまう。口汚くお父さんをなじるお母さんがいる家の子は、決まってそういう言葉使いをしてしまったり、短気に物を壊す親の元で育った子は、やはり同じようなことをしてしまいがち。

 そして現在の砂場では、女の子二人に男の子一人という修羅場が発生していた。

「よりにもよって、なんでそのオンナなのよ!」と奥さん役の子。
「ちがうんだ。おまえ」と夫役の子。
「うそつき。おくさんとわかれるって、いったのに……」と浮気相手役の子。ヨヨヨと迫真の泣き真似を織り交ぜる、芸達者ぶり。

 なんともスリリングな展開。
 これをドキドキしながら見守っていたのは、二人の女の子。
 ミヨちゃんとヒニクちゃんだ。
 放課後に一緒に遊ぼうと、公園にやってきたところを、この名演に遭遇。
 この後、砂場では、物語が二転三転し、最終的には夫が妻に三行半を突きつけられ、愛人にも捨てられるという、ラストを迎えた。

「やっぱりオンナはつよいねぇ」

 浮気男が成敗されて、スカっとしたのか、ミヨちゃんがいつになくご機嫌。
 ヒニクちゃんは無言にて、コクコクと頷いて同意を示す。
 大満足した二人が公園内を散策していると、今度は騒がしい話し声が聞こえてきた。そちらの方をみると、数人のご婦人方が集まって井戸端会議に興じている。地声が高いのか、よく通る。おかげでその気がないのに盗み聞きするハメに。

「うちの嫁ったら信じられないのよ。新居にマンションか家でも買ってやろうか? って言ったら、いらないだなんて言うのよ」

 小奇麗な格好をした初老の女性が、仲間たちに吼えている。
 どうやら今度、息子が結婚するので、その祝いに新居をどーんとプレゼントしようと提案したようだ。なんとも豪気な話である。だがそれをあっさりと拒否された。
 姑からの贈り物を断るとは、嫁もまた豪気。

「もったいないよねー。くれるっていうんだから、もらっておけばいいのに」

 もっともな意見を口にするミヨちゃん。いまどきこんな太っ腹な親なんて、なかなかいない。自分ならば駅前のタワーマンションの最上階をもらうと、幼女の鼻息がムダに荒い。
 するとこの発言を受けて、長らく閉じられていたヒニクちゃんの口が、おもむろに開く。

「究極の二択」

 目先のエサに飛びついて、せっかくの新婚の蜜月を邪魔されるか。
 いずれもろもろが手に入るので、ぐっと我慢して蜜月を堪能するか。
 立派な新居だと、きっと姑がちょくちょく来て、居座ると思うの。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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