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25 残る想い
しおりを挟む校庭の片隅にて集うクラスメイトたち。
みなしんみりとしており、なかには泣いている子もいる。
クラスで飼っていたハムスターがお亡くなりになったのだ。
この頃、ちょっと食事の量も減っており、元気もなくて心配していた。だから気をつけていたのだが……。
生き物を飼うということは、その死をちゃんと看取るということ。
埋葬してお墓を作り、花を供える子どもたち。
そんな悲しい出来事があった日の帰り道。
まだ別れを引きずっているのはミヨちゃんが、ぐすんと鼻を鳴らす。
モフモフ系にとことん嫌われるという宿業を背負う小学二年生の彼女。最初で最後の触れあいが、まさかの埋葬時という悲惨な経験に、かなりショックを受けていた。
なんとも不憫な友人の肩をポンポンと優しく叩き、慰めていたのはヒニクちゃん。
モフモフ系にやたらと好かれる体質にて、飼育係でもないのにハムスターにも一番懐かれていた。だが小動物の平均寿命を考えれば、この別れも仕方がないと、悲しい心にそっとフタをする健気な子。
ハムスターとの別れを経験して、しんみりとしていたミヨちゃん。
とぼとぼと、いつもよりも重い足取り。そんな中で彼女が口にしたのは、自分の祖父のこと。
彼女がまだずんと幼い頃に死んでしまったおじいちゃん。
おばあちゃんの話では、ミヨちゃんのことをたいそう可愛がっていたというが、いかんせん赤子の頃にて、記憶がまるでない。顔は仏壇の上に飾ってある写真にて知っているが、それだけ。
いまではとくに思い出すこともない。
「なんだかさみしいなぁ」
ポツリとつぶやくミヨちゃん。
自分のおじいちゃんも、あのハムスターも、どんどんと忘れてしまう。
それがなんだかとってもさみしいと嘆く。
「こんな風に、自分も死んだら、みんなにわすれられちゃうのかなぁ」
友達のこの言葉を聞いてヒニクちゃんが静かに口を開いた。
「だったらいい方法がある」
「どんな方法?」
「みんなからたくさんお金を借りる。そうしたら誰も忘れない」
「それはそうだけど、なんだかちょっとちがう気がする」
「……ごめん」
わたしは絶対にあなたを忘れない。
だからあなたもどうか忘れないで。
そう素直に言えない自分がもどかしいと思うの。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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