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13 接触事故

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 下校時に立ち止まる二人の女の子。
 彼女たちがいつも通っている道が、道路工事中にて通れない。
 土煙をあげショベルカーが地面を掘りおこし、アスファルトがめくれ、むきだしとなった砂利のうえにて、作業服姿の屈強な男たちが、道具を手にせわしなく働いている。
 事故防止を啓発する看板が、工事現場の脇に掲げられてある

「ちゅういっしゅん、ケガいっしょう」

 看板の文字を、声に出して読んだのは、ミヨちゃん。
 性格の良さが災いして、なにかと級友たちからは雑事を押しつけられ、クラスでもお人好しで通っている小学二年生の女の子。この頃、見かけた漢字を読むのがマイブーム。おかげで国語の小テストの点数が、グングンあがっている。
 となりでパチパチと拍手をしていたのは、ヒニクちゃん。
 下手をすると一日で百文字程度も話さないという、極端に無口な子。お人形さんのように可愛らしい見た目のわりに、たまに発する言葉がキツイので、本名のコヒニクミコをもじって、このように呼ばれているが、当人はまるで気にしていない。そのせいで今では、すっかり愛称として定着している。

「ケガといえば、おかしいんだよ。このまえねえ……」

 ご近所のお兄さんが運転する自動車が交通事故を起こした。
 自転車にて横断歩道を渡っていた女性と、右折の際に接触してしまったのだ。幸いなことに怪我はたいしたことなくて、ねんざ程度ですんだという。
 とはいえ事故は事故。すぐに車を止め、警察と救急車を手配するお兄さん。
 彼は努めて理知的に、かつとっても誠実に対処した。
 その結果、彼の評判はかえってあがり、しかもこれをきっかけにして、相手の女性とつき合うことになり、ついには結婚という話にまでなったという。
 はねた女性と結婚することになった男性の話を、たのしそうに話すミヨちゃん。
 これを聞いていたヒニクちゃんが、珍しくニヤリと笑みを浮かべる。そしておもむろに長らく閉じていた口を開いた。

「この看板と同じ」
「どういうこと?」
「一瞬の不注意にて事故。そして彼は一生ものの大怪我」
「ケガはねんざだよ。すぐになおったよ。それにケガをしたのは女の人の方だよ」
「……ごめん。ミヨちゃんには、ちょっと早かった」

 男性は結婚を、人生の墓場だとか、事故とか怪我に例えたがる。
 女性はしばしばクジに例える。いい相手と接触事故を起こす確率と、
 一等賞が当たる確率、はたしてどちらが上なのしら。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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