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026 ポポの里防衛戦。祝勝会!

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 盛大に焚かれる炎。
 煌々と照らされる里の広場。
 続々と運ばれてくるサルどもの骸が山となり、地に長い影を落とす。
 これを前にして神父さまが冥福を祈る言葉をうにゃうにゃ捧げ、里人たちはしばし黙祷。
 からの、里人総出による解体作業が開始。
 食べられる箇所、使える部位をのぞき、残りは刻んで森に捨てたり、灰にして畑にまく。
 もっともアカザルとシロザル、ともに食べられるのは脳みそのみ。
 薬剤となるのはシロザルの股間だけなので、ほとんどが廃棄処分される。
 まぁ、おかげで解体作業がはかどるはかどる。
 首をちょん切って、頭をかち割って、あっちを抉って、あとはぶつ切りにするだけだから。
 ただ血のニオイが辺りに充満するのだけは、ちょっと気持ちが悪いかな。

 取り出した新鮮なサルの脳みそは、大鍋に放り込まれてグツグツ煮込まれる。
 すると、あらふしぎ!
 溶けた脳みそは、深いコクと豊かな味わいを持つトロみを帯びた桃色汁に変わる。これに野菜やら肉を入れると、極上の椀物に仕上がるのだ。
 なお食通は新鮮なヤツを生のままで直接いくらしい。
 舌の上でとろける食感が天にも昇る心地という話。だがかなりの高い確率であたる。壮絶な腹痛に見舞われ、三日三晩悶え苦しむという。「それでも食べたいサルの脳みそ」という食道楽もいるらしいが、わたしにはとても理解できない境地である。

  ◇

 ある程度おかたづけの目途がつき、鍋がいい感じで煮立ってきた。
 頃合いにて里長のモゾさんが音頭をとって、祝勝会の開始を告げる。

「みんな、よくがんばってくれた。おかげでポポの里は誰一人欠けることなく、危難を乗り越えることができた。今夜は存分に飲み食いして勝利を祝おう。乾杯」

 手にした杯やら、椀をかざして里のみんなが笑顔で「かんぱーい」
 互いの健闘を称え合い、あるいは己の武勇伝を吹聴しつつ、盛りあがる里人たち。
 愛妹カノンが仲のいい子たちの輪に加わったのを見届けてから、わたしはみんなから少し離れたところに「よっこらせ」と腰を降ろす。

「ミヤビもおつかれさま。今日はありがとうね」

 白銀スコップに変じ、懐におさまっている勇者のつるぎをねぎらう。

「あの程度のこと造作もありませんわ」とミヤビ。「でも、わたくしの華々しい活躍をチヨコ母さまにお見せできなかったのが、少々悔やまれます」

 なんとも頼もしい我が子。「次は目にもの見せてくれん!」と勇ましい。
 でも勇者のつるぎに本気を出されてバッサバッサ殺られると、一帯が丸裸になっちゃう。
 それに今回みたいなことがそうそう起こってはたまらないので、剣の母たるわたしはちょっと苦笑い。
 母子にてそんなやりとりをしていたら、近づいてきたのはサンタ。
 神妙な面持ちにてモジモジ。何ごとかとおもえば、「さっきは、その、助かった。まだちゃんと礼を言ってなかったから」なんぞと口にしペコリと頭を下げた。
 がっかり幼なじみのやんちゃ坊主には似合わない殊勝な態度。
 あまりのことに驚いたわたし。思わず手にした椀を落としそうになり、「サルの脳みそをナマで食べたのか?」
 我ながら失礼な物言い。
 当然ながらサンタはぷりぷり怒って、「チヨコの阿呆っ!」との捨て台詞を残して行ってしまった。
 うーん、失敗失敗。

  ◇

 年頃の坊やをきりきり舞いさせた罪なわたし。反省しつつサル汁をすすっていたら、「ひぃ」という何者かの悲鳴。
 祝いの席にはそぐわない甲高い声。
 何ごとかと、みな声のした方にぐりんと顔を向ける。
 するとそこには上等なお召し物を着た官吏らしき男性の姿が。
 腰を抜かして、アワアワしていたので近くにいた里人が声をかけると、とたんに「ぎゃあーっ! 喰われるーっ!」と叫んで逃げていった。
 これにはみんな呆気にとられてキョトンとなる。

「なんだったんだろう?」
 わたしが首をひねると、早くもご機嫌にて千鳥足のホランが「ヒック、こりゃあ、かんちがいをされちまったのかもなぁ」とケラケラ笑う。

 フム。確かに盛大に篝火を焚き、里人たちが嬉々として人型禍獣を切り刻み、脳みそをむさぼり喰らっている姿は、まさに怪しげな儀式。とっても猟奇的な光景に見えなくもない。
 もしもわたしが外部の人間だったら、まちがいなく逃げるね。
 そりゃあもう一目散に。
 にしても、なんと間の悪い……。


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