剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!

月芝

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020 ポポの里防衛戦。開幕!

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 サルの銅禍獣たちとの戦さは大人たちの仕事。
 良い子は指示にしたがって、いそいそ退避。
 というわけで、妹のカノンを連れて教会の地下堂へ向かおうとしたら、背後からむんずとえり首をつかまれた。

「おい、ちょっと待て嬢ちゃん。何をシレっと逃げようとしていやがる」
「何をってホランさん、避難するんだよ。だって、わたしはまだ十一歳のピチピチ小娘。邪魔にならないように、巣穴にこもるのです」
「里一番の戦力を保有しているくせに、そんなことが許されるとでも?」
「えー、子どものチカラを当てにする大人なんて、かっこう悪いとおもうなぁ」

 男は面子や誇りを刺激されると、すぐにムッとなって意地になる。
 だから思い通りに動かすのならば、そこをくすぐってやればいい。
 呪い師ハウエイさん直伝「男を上手に転がす方法」をわたしは実践。
 しかし……。

「かっこう悪くても、無様でも、恥知らずでもけっこう。それよりもオレは自分の貞操が大事だ。これを守るためならば、鬼畜外道ど変態の称号も甘んじて受け入れよう」

 いざともなれば乙女すらも盾にして、自分の尻を守る。
 臆面もなく堂々とそう宣言したホラン。
 残念ながら「男を上手に転がす方法」は不発に終わった。
 誰にだって何にかえても守りたいものがある。
 ホランはとっくに選んでいたんだ。
 何を捨てて、何を守るのかを。

 わたしの中で彼の評価がさらに下がった。

  ◇

 空が橙色に染まり、迫る夕闇。
 濃くなる森の陰影。
 これに紛れるようにして、ムッキムキのサルの銅禍獣どもが襲来。「ウッキー」「ウホウホ」

 ポポの里の正面入り口。
 サルの群れを片っ端から斬り伏せるのは、隻腕隻眼隻足の老剣士ロウ。仕込み杖から刃が閃くたびに、バッサバッサとサルどもが両断されていく。
 返り血にて全身を朱にしながら、ひたすら敵を斬り続ける剣鬼。
 刃が嵐となりて血風が吹き荒れる。
 しかし、いかに奮闘しようとも孤軍では限界がある。数を頼りに怒涛の津波となりて押し寄せる敵勢を、押しとどめることはかなわない。しかもサルどもは奸智に長けていた。
 ロウの足が不自由だとすぐに見抜き、彼に殺到する一方で、群れを分割し大きく迂回する集団が出現。
 ポポの里には都や街のような立派な防壁はない。ちょっとした堀と木でこしらえた柵があるばかり。
 身軽なサルにとってはなんら障害にならず、やすやす超えて里への侵入を果たす。

 勢いのままに教会や里長の家がある広場へ到達したサルたち。
 すると、そこには極上の獲物の姿があった。
 上背があり、服の上からでもひと目でわかる、がっちりした体格。
 茶色の髪をかきあげると、あらわとなるのは涼やかな金の瞳に端正な顔立ち。
 偉丈夫の正体はチヨコ・カノン姉妹の父であるタケヒコ。
 里一番の美形夫婦の片翼。
 これを前にして、だらしなくヨダレを垂らすサルたち。
「もう、しんぼうたまらん」とばかりに、シロザルどもは股間をたぎらせ、アカザルどもは舌なめずり。
「ヒャッハー」奇声を発して、我先にと獲物へ殺到する。
 あっという間にサル山に埋もれたタケヒコ。
 が、次の瞬間、「轟っ」と風がうなり、サル山が粉砕!
 蹴散らしたのは巨大な斧。
 自分の身の丈よりも大きな斧を軽々と操るタケヒコ。
 先祖伝来の大柄な体躯のみならず、常日頃から畑仕事に木の伐採にと勤しんでいる腕力は伊達じゃない。ちなみに身に宿どりし才芽は、頑強。
 夕陽の残光を受けて、タケヒコの左手首にきらりと光るのは銀の腕輪。
 それは既婚者の証。

「俺には愛すべき妻と娘たちがいる。悪いが遊び相手ならば他を当たってくれ」


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