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007 水と土の才芽
しおりを挟む井戸から水を汲んで、バケツに移す。
あるいはジョウロに移す。
もしくはコップに移す。
ヤカンやオケでもかまわない。
すると、あらふしぎ!
なにやら水の機嫌よくなって、カラダとか農作物に、とってもいい水に変わってしまう。お肌ピチピチにて、鍋の底にこびりついた焦げや頑固な油ヨゴレもみるみる落ちちゃう。
それがわたしことチヨコの二つ目の才芽「水」の特徴である。
まちがっても「水刃斬!」とか叫んで、シュパッと敵を真っ二つになんかはできやしない。
あと「大爆流!」とか叫んで、敵勢を濁流に呑み込むこともできやしない。
敵の体内の水分を放出させて、「枯れておしまい!」なんてキメ台詞を吐くこともできやしない。
とどのつまり、水の才芽は「わたしが手ずから関わった水に、良き変質をもたらすチカラ」ということ。
まぁ、おかげで作物や花はすくすく育ってくれるし、カラダは健康だからありがたいけれども、ちょっとガッカリでもある。
そうそう。才芽といえば、神父さまいわく、わたしは史上初の三つ持ちらしい。
ゆえにあとひとつ残っている。
それが土の才芽。
一連の流れから、もうおわかりであろう。
こっちも水と似たり寄ったり。まちがっても「ここから先へは行かせない。いでよ、土壁」とか「これで一網打尽だ。いでよ、大奈落」とか「てめえをハチの巣にしてやるぜ! 唸れ、石の弾丸」などという、カッコイイことはできない。
できるのは土イジリにての土壌開発。
わたしが手を加えると、あらふしぎ!
育てる作物に適した土に変化する。もしくは「土をこねて器でも作るか」と考えながらイジると、いい具合の粘土になる。
便利といえば便利だ。スゴイといえばスゴイ。使い方次第で有益なのはまちがいない。
でも地味だ。
小娘ひとりの手でこなせる仕事量なんてたかが知れている。ゆえにやっぱりイマイチ。
父タケヒコばりに大きく逞しく育てば、またちがってくるのだろうが、それは女の身としてはどうなのだろう。
◇
悩んだ末に、わたしは家族に相談してみた。
父タケヒコは、娘から面と向かって「将来、お父さんみたいになるのはちょっと」と告げられ、膝から崩れ落ちた。
フム。いささか言葉が足りなくて、誤解を与えてしまったらしい。
すまない、父よ。
母アヤメは、「お肌がピッチピチになる化粧水、ドロ洗顔、若返り効果のある飲料水なんてのもイケるわね。剣の母印でウハウハ。がっぽがっぽ大儲けよ」と俄然、商魂を燃やす。母はあぶく銭にて身を持ち崩す気まんまんだ。
善良な田舎の主婦を惑わすとは……。
げに恐ろしきはお金の魔性なり。
妹カノンは、「おねえちゃんが淹れてくれたお茶、とっても美味しいよ」とニッコリ微笑む。
無垢な笑顔にほだされ、わたしの荒んだ心が癒されかけるも、すかさす母が「美容にいいお茶もアリね」とつぶやき、台無し。
「自分のせいで家庭崩壊とかは、さすがにイヤだなぁ」
わたしがしみじみもらすと、勇者のつるぎミヤビが「心配せずとも、チヨコ母さまにはわたくしがついております。何があってもお守りしますわ」と励ましてくれた。
剣の母を気づかう優しい子。
でも「一番の頭痛の種はおまえなんだよ」という言葉は、さすがにアレなのでグッと呑み込んで内に秘めておく。
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