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894 獣王武闘会本戦 一回戦第八試合 前編
しおりを挟むBブロックもいよいよ大詰め。
一回戦第五試合、尾白探偵事務所VS益荒男。
片や、よくわからない混成チーム。
片や、全員武具を手にした獣侍どものチーム。
ちなみに対戦形式は変則戦にて、タッグ、タッグ、シングルという内容になった。
いよいよおれたちの出番だぜ! とはいえぶっちゃけ会場のテンションは低めである。
なにせBブロックときたら見所満載で、熱戦につぐ熱戦続きなんだもの。
挙句に鬼に格のちがいをみせつけられた直後ということもあって、観客たちはもはやお腹いっぱいといった感じ。心なしか客席に飽きが目立つのは、トイレ休憩か?
そんな微妙な空気の中、先鋒戦に登場したのは……。
チーム尾白探偵事務所からは、おれこと尾白四伯と弧斗羅美。
ご存知「百化けの尾白」の異名を持つ町の探偵屋さんと、畿内にて知らぬ者はいない荒事師のトラ猛女。
チーム益荒男からは、柳生八兵衛と宝蔵院師宣。
柳生八兵衛は西国予選にてチーム侍魂に所属していた愛くるしい美少年。その正体は「歩くぬいぐるみ」との異名を持つネコ、ラグドールの血統書付きの子。螺美蓮流の遣い手で得物に蛇腹剣を使う。
宝蔵院師宣は筋骨隆々の大入道にて手には槍を持っており、その正体はシカである。久瑠火駆琉槍術というドマイナーな流派の稀少な遣い手。ではどうして人気がないのかというと、それは使う得物のせい。通常のよりもひと回り太い槍を扱うがゆえに、チカラがいるし、なにより使い勝手が悪い。あと見た目が野暮ったくて、槍というよりもごつい麺棒を振り回しているみたいで、とにかくダサい。しかし一撃必殺を信条に、気合いもろとも突き込まれる穂先の威力は他の槍を圧倒するパワーがある。
試合開始前から、対戦相手よりおれに対して熱い視線が注がれている。
なぜか?
理由は簡単だ。弱そうなヤツから狩るのが自然界の基本だからである。
この四名のなかでもっとも貧相なのが誰かなんて、言わずもがなであろう。
だがそんなことはこちとら百も承知。だからおれは試合開始の合図とともにドロンと「変化っ!」
突如として闘技場内にあらわれたのは鋼の勇姿。
巨大な二本の鉄腕にハサミを持つパワー重機。
スペイン語でザリガニの名を持ち、レバー操作によりぎゅぃんがしゃんと自在に動くメカメカしい双腕は、男心をくすぐること間違いなし。なお腕の先端のハサミ部分がアタッチメントになっており、物をつかむグラップル、鉄骨などを切断するカッター、コンクリートやアスファルトを砕く圧砕機、砂利や廃材を載せるバケットなどがあり、用途に応じて付け替えることができる優れモノ。一台でいろんな役割りをこなす多才なこいつの登場によって、解体作業効率と現場の安全性が飛躍的に上昇したといわれている。なお災害救助の場面でも活躍中。
みなさまご存知、アスタコ重機。
本日は黄色と黒のトラ柄模様のカラーリングで華麗に参上。
でもって勘のいい諸兄ならばすでにお気づきであろう。
おれがどうして弧斗羅美と組んで先鋒戦に臨んだのかという理由が……。
弧斗羅美ことトラ美はこうみえて各種運転免許を持っている。大型特殊免許に車両系建設機械運転技能講習にて解体用および掘削用をも習得している。トラ美は戦いぶりこそは豪快で破天荒だが、じつはけっこう堅実派だったりもする。
あいにくとおれはいろんなモノに化けられるけれども、自分ではほとんど動かせない。操縦者が必要不可欠。
ゆえにたしかな技術を持つ者が重機に乗り込めば鬼に金棒である。
まぁ、操縦するだけならば零号でもよかったのだが、ほら、いちおう公衆の面前だし、さすがに無免許はいかがなものか、という大人の配慮だ。
「なっ! そんなのありかよ?」
「ずるいぞ、男だったら尋常に勝負しろ!」
などという益荒男側からの抗議は無視して、トラ美は操縦席に乗り込む。
かくして始まったパワー重機と獣侍との戦い?
キャタピラが唸り、マシンが吠え、鉄腕が暴れ、男たちは逃げ惑う。
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