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しおりを挟むおみくじとひと口にいっても地域や神社にて、けっこういろいろ違いがある。
大吉、中吉、小吉、吉、末吉、凶、大凶にて、基本七種類。
これに半吉、末小吉、小凶、半凶、末凶らを加えた十二種類としている場合が一般的。
他にも、大大吉(だいだいきち)、凶後大吉(きょうのちだいきち)、凶後吉(きょうのちきち)、末大吉(すえだいきち)、向大吉(むこうだいきち)、小凶後吉(しょうきょうのちきち)、後吉(のちきち)、吉凶未分末大吉(よしあしいまだわからずすえだいきち)、吉凶不分末吉(きちきょうわかたずすえきち)、吉凶相交末吉(きちきょうあいまじわりすえきち)、吉凶相半(きちきょうあいなかばす)、吉凶相央(きちきょうあいなかばず)、平(たいら)にておみくじを分類しているところもある。
京都の伏見稲荷大社ともなれば三十二種類もあるというから驚きだ!
おみくじの形もいろいろ。
石清水八幡宮ではハトの置物とおみくじがセットになっている。
明治神宮のおみくじは「大御心(おおみごころ)」と言い、吉凶が書かれていないことで有名である。
氷川神社は魚釣りを模した「あい鯛みくじ」が楽しい。これは鯛の置き物を釣り竿で釣り上げると、しっぽのところにおみくじが付いるという仕組み。ちなみにここのご利益は縁結びの恋愛成就。
その他にも、近年では各神社が商売っ気を燃やし、いろんな趣向を凝らしてユニークなおみくじを作っては販売するようになっている。
もっとも寺社仏閣が銭ゲバなのは、いまに始まったことではない。なにせ昔は現代の闇金よりもはるかにブラックな高金利金貸し業とかやっては、ぶくぶく私腹を肥やしていたことだし……。
◇
つらつらと「おみくじうんちく」を語ってくれたのは、零号。
「ちなみにおみくじで『平』が出る確率は、二パーセント以下です。もっとも『平』を採用するか、どのぐらい入れるかなどは神社側の裁量ですので、あくまでこの数字は目安にしかなりません。なおその意味は『可もなく不可もなく』といったところでしょうか」
神道の教えでは、浮き沈みの激しい乱高下のあるエキサイティングな人生よりも、平々凡々、波風なく安定している方が素晴らしいとされているとのこと。
「それってとどのつまり現状維持ってことか?」
おれの言葉にうなづく零号「そうとも言いますね」
なるほどと納得しつつ、おれはほっと安堵の吐息をこぼす。でも、それならそうと言ってくれればいいものを。
最初のうんちく語りの部分、いらなかったような……。
おれはあらためて手元にある「みくじ箋」をしげしげ。
吉凶の文字ばかりにとらわれて、内容の方を見ていなかったからだ。
「あー、なになに『首に注意! 尾白、うしろ、うしろ!』って、わけがわからん?」
ふざけた文言におれが首をかしげていると、不意にカシャリと音がしたもので、あわてて振り返る。
視線の先には電球の明かりが届かない闇がある。その中に何かがいた。そいつが一歩、こちらに近づくことに、カチャリ、カチャリと音が鳴る。
ぬぅっとあらわれたのは、ぎらりと光る太刀の切っ先。
続いて姿をみせたのは歩く五月人形もとい、立派な兜をつけた鎧武者。音の正体はそいつが動く音だった。
鎧武者、近づいてきたとおもったら、いきなり太刀をぶんっと横薙ぎ!
驚いたおれは「うひゃあ」と尻もち。その頭上を白刃がびゅんとかすめる。
もしもぼんやり立ち尽くしていたら、あのまま首を刈られていた。
「って、首に注意ってそういことかよ! まさかの平ちがい! 平って平家の方とかわかりづらい! あと神道、微塵も関係ねえっ!」
口を突いて出る怒涛の突っ込みの数々。
おれは言わずにはいられなかった。でも、そんなモノで鎧武者の攻撃を止められるわけもなく、すかさず二撃目が打ち下ろされる。
お次は脳天めがけての唐竹割り。
おれはとっさに腕をかざして部分重ね化けでしのごうとするも、それよりもヤツの太刀の方が少し速い。いかん、これでは間に合わない。
最悪、腕の一本を覚悟したおれであったが、凶刃は寸前のところで防がれる。
ガキンと止めたのは零号。アニマルメイドロボが腕から警棒を生やして対抗する。
小さな体に宿る百万馬力、押し返された鎧武者がよろめき後退。だがすぐに体勢を建て直してふたたび攻撃へと移ろうとしたところで、殺到したのは三つの影。
膝下を薙ぐように蹴り払ったのは、ヘビ娘のタエちゃん。
側頭部に回し蹴りをかましたのは、タヌキ娘の芽衣。
そして胴体をズドンと蹴り飛ばしたのは、トラ猛女のトラ美。
各々が強力な一撃、そんな彼女たちの三身一体攻撃を受けては、さしもの鎧も用を成さない。
かくして撃退された平家の武者?
壁際にてぐしゃりとなって、それきり動かなくなった。
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