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853 双六遊戯
しおりを挟むいざサイコロを振る前に、みんなでじっくりスゴロクの紙面を舐めるようにして見る。
「いちおう『即死』とか『呪われる』や『生贄をひとり選べ』みたいなのはないようだな」とおれ。
「あー、デスゲーム的なやつですか。その手のシチュエーションが巷では流行っていますからねえ」と芽衣。
「でも、ちょっと『振り出しに戻る』と『おみくじを引く』が多いな」とトラ美。
「ゴール前の三連続『振り出しに戻る』には悪意を感じる」とタエちゃん。
「やはり気になるのは『おみくじ』ですね。あの大きさと、この自己主張の強さからして、きっと何かあるでしょう。いいえ、むしろなかったら詐欺です。あとサイコロの方も念のために調べてみましたが、細工をした形跡はありません。ごく普通の品ですね。もっともケース尾白案件絡みですから、あまり当てにはならないでしょうけど」とは零号。
だったら先におみくじの紙が納められているであろう棚の引き出しの方を、調べてみようとしたのだが、そちらはうまくいかなかった。
取っ手を掴んでいくら引っ張っても、うんともすんともしやしない。
巨大おみくじの方も同様にて、持ち上げて振れば中で筮竹がじゃらじゃら鳴るが、いくらやっても一本が飛び出してくることはなかった。
どうやらズルはダメのようだ。
一見すると物理法則無視で、無茶苦茶な怪異。
でも独自の法則が存在しており、そのルールにのっとった行動をさせられるケースが大半。今回はそれがスゴロクという遊戯に適応されるということなのだろう。
赤、青、黄、緑、黒、用意されてある五色の駒たち。
タヌキ娘の芽衣が赤、ヘビ娘のタエちゃんが青、タイガー荒事師のトラ美が黄、アニマルメイドロボの零号が緑、おれが黒を持ち駒とし、サイコロもこの順に振ることにする。
「ふふん、こんなのちょろいちょろい。六を出しまくって速攻でクリアしてやるわ」
自信満々にてサイコロを振った芽衣。
てっきり口だけなのかと思いきや、本当に六を出しやがった!
だが駒を進めた先は「おみくじを引け」のマス目であった。アウチ。
指示通りに巨大おみくじをシャカシャカするタヌキ娘。すると先ほどはうんともすんともいわなかったのに、今度はあっさりひょこっと一本飛び出した。筮竹の先に書かれてあったのは「への三番」という赤文字。
これに従って棚の引き出しに手をかければ、こちらもすんなり開いた。
中には折りたたまれた紙が収納されている。神社でもお馴染みの「みくじ箋」だ。そいつを取り出し広げてみれば……。
「えーとなになに、小凶、頭上に注意ねえ。恋愛運、金運はなし、か。ちえっ」
何げにがっかりしているタヌキ娘。占いやおみくじなんてと思っていても、一喜一憂してしまうのが庶民感情なのである。おれも朝の情報番組の占いコーナーとか、何げにチェックしているし。
なんぞと考えていたら、世にも珍妙な現象が起きた。
芽衣の手の中にあった「みくじ箋」が唐突に消失!
かとおもえば、頭上より降ってきたのは金盥(かなだらい)。往年のコントや罰ゲームでおなじみのあれだ。
これまた唐突に何もない空間よりあらわれた。
だがしかし、狸是螺舞流武闘術を修め、若くして達人の域へと達しているタヌキ娘には通用しない。
「ふっ、甘いわ」
ひょいとかわした芽衣。だがしかし、かわした先にてさらにもう一つ金盥が出現!
しかも通常パターンとはちがって、横ではなくて縦にて落ちてきた金盥。すっかり油断していたタヌキ娘の脳天を直撃。
「ガン」といい音がして、芽衣は「ぎゃっ!」
おみくじの内容が本当に起きた?
これには一同騒然となる。
どうやら零号の懸念していたことが当たってしまったらしい。やはりこのスゴロク遊戯、ひと筋縄ではいかなそうである。
◇
二番手のタエちゃんが、ゴクリとツバを呑み込みながらサイコロを振る。
出た目は三にて、マス目にはまたしても「おみくじを引く」の文字が……。
しぶしぶおみくじをやってみれば、これまた小凶にて「おしゃれがうまくいかない」と書かれてあった。
タエちゃんの手元の「みくじ箋」が消えるのと同時に、へにょんとへたったのはヘビ娘のトレードマークである金髪リーゼント。バッキバキに固められており、「なんだこら? あん、やんのか!」にてオラオラ系であった髪が、チカラを失いすべてだらりと垂れさがる。
「うわっ、なんだよこれ? せっかくセットしたのに」
ぼやくタエちゃん。しかしじつはすらりとした長身美人のヘビ娘。髪をおろしたことによりヤンキーモードからモデルモードにメタモルフォーゼ。
それを見た芽衣が「同じ小凶なのに。なんか納得いかねーっ」と吠えた。
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