おじろよんぱく、何者?

月芝

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681 オールスターっぽい感謝祭

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 おれがトラ美に「手を貸してくれ」と頼めば、快諾にて「すぐに行く」との返事。
 だからてっきりいつものバイクで颯爽と駆けつけるのかとおもいきや、なぜだか湾岸地区から直行してきたような大型トレーラーにて、ブゥンとやってきた。
 でもって積んであるコンテナの内部には、見知った顔がぞろぞろと。

「親友が殴り込みを駆けるのならば、それに付き合うのが漢というもの」

 拳を固く握り、そう言ったのは姫路アニマルキングダムが誇る近衛師団・位階第三位にして独岩龍拳闘術どくがんりゅうけんとうじゅつの遣い手である、イケメンゴリラ拳闘士の佐藤晋太郎。
 マッチョぶりにさらなる磨きがかかっていることにも驚きだが、やつのなかでおれが親友に勝手に格上げされていることにこそ驚愕す。

「いやぁ、ちょうど合同訓練の打ち上げ中だったもので、なんだかみんな盛り上がっちゃって、ついてきちゃった」

 テヘペロと笑ったお姉さんは近衛師団・位階十三位にして闇陀琉枝蛙蹴撃術あんだるしあしゅうげきじゅつの遣い手である、キリンの鈴木夏帆。

「たまには実践でカラダを動かさんとなまるからのぉ」

 ゴキゴキと首を鳴らすのは近衛師団・位階六位にして古流守母胡柔術こりゅうすもうじゅうじゅつの遣い手である、ゾウの田中仁蔵。

「おれっちは、つき合いの暇つぶしっすから、頭数から抜いといてください」

 軽薄な調子の若者は近衛師団・位階九位にして蹄轍修験道あつわだちしゅげんどうの遣い手である、シマウマの五島八雲。

「男なんて、男なんて、男なんて……」

 薙刀片手にぶつぶつ恐い。でもキレイなのは近衛師団・位階十一位にして山吹倶利伽羅流やまぶきくりからりゅうの遣い手である、ナキハクチョウの細川巴。
 以前に見かけたときよりも、ネガティブさに拍車がかかっており、まとっている陰が濃い!

「ワガハイ、原稿の閉め切りが近いんだがのぉ」

 しぶしぶ参加した感がありありなのは近衛師団・位階二十位にして睡拳すいけんの達人である、ナマケモノの百地繁太郎ももちしげたろう。連載を抱える作家でもある老爺。

「すまない、尾白くん。しかし公然と人間を斬れる機会はそうそうなくてねえ。たまに愛刀に血を吸わせてやらないと、切れ味が……」

 なんぞと本気か冗談かわからないことをシレっと口にしたのは、右目に一文字傷を持つ隻眼の烈女。近衛師団・位階一位にして流派・屍留越徒水落珠しるえっとみらーじゅの遣い手である、クロヒョウの如月伊織。

 総敷地面積二百五十万平方メートル。動物の種類百二十四。飼育総数は千頭羽以上。
 年間百万人以上もの来場者数を誇るサファリパーク・姫路アニマルキンダム。
 山あり、谷あり、川あり、湖あり、サバンナあり、森ありと、とにかく自然がいっぱい。
 ドライブサファリコースで園内を巡るもよし、ウォーキングサファリコースで冒険気分を味わうもよし、園を縦断するロープウエイに乗って空から楽しむスカイサファリコース、日頃は見られない夜の動物たちを楽しむナイトサファリコースもある。思うさまにモフモフを堪能できるふれあい広場も大好評。

 そんな姫路アニマルキングダムから精鋭を集めて結成されているのが近衛師団。位階総数は二十一のみ。どいつもこいつも一騎当千の猛者にて、西日本の動物界きって実力を持つ武闘派集団でもある。
 うち七名が揃い踏み、しかもそれを率いているのが筆頭……。

「なにしてんだよ、あんた」

 おれが心底呆れ顔をみせると、如月伊織は「いやあ、これでも減らしたほうなんだがなぁ。他の連中も来たがって、諦めさせるのがたいへんだったんだ」と頬をぽりぽり。結局クジ引きで決めたそう。

 トラを呼んだら、なんだかゾロゾロとオマケがついてきた。
 だが今宵はこれだけではすまなかった。

 芽衣の方から連絡をもらった、カラス女の不良刑事である安倍野京香が連れてきたのは、長刀を背に持つ、貴公子然とした剣士。
 佐々木アルフォート、久万句弓一刀流くまくていっとうりゅう免許皆伝の猛者。ハスキーとドーベルマンのミックス犬にて、やせマッチョに銀の毛並みを持つ。四肢も鼻筋も長い美犬。
 闇堕ちして聚楽第の軍門へと下った剣友・宮本めざしを止めるべく、修行に励んではいるものの、いかんせん飼い犬という立場が足枷となり、ままならず。焦りばかりが募る今日この頃。
 今夜もこっそり家を抜け出して、ぶんぶん剣を振っていたところを、カラス女に声をかけられての参戦。

「すまぬが、世話になる」と腰の低い佐々木アルフォート。あいからず見た目も中身もイケメンだ。
 それにひきかえカラス女ときたら「ほら、なんとかとハサミを使いようっていうじゃねえか」なんぞとほくそ笑んでいるのだから、性質が悪いったらありゃしない。

「おうおう、強そうな連中がぞろぞろしていやがる。あー、ケンカしてえ」

 はしゃいで興奮しているのは、金髪リーゼントのヘビ娘である白妙幸ことタエちゃん。
 我流ながらも天賦の才にて、日々進化しているおそろしい子。芽衣の友人枠での参加。

「ちょっとはしたないわよ」

 そんなタエちゃんをたしなめていたのは、キツネお嬢さまの出灰桔梗。可憐にみえて、その実は超苛烈、狐崑九尾羅刃拳ここんきゅうびらじんけんの遣い手。同じく芽衣の友人枠での参加。

「佐藤さんってば、あいかわらずいい筋肉してるわね。じゅるり」
「私はあっちの長刀のワンコくんがいい。イジメがいがありそう」
「……うぅ、なんか酒くさい」

 見目麗しいのは御天三姉妹。長女翠雨、次女氷雨、三女時雨。
 京の都は伏見稲荷に居を構える組織・裏千社に所属する彼女ら。桔梗とは同門にて、本日はたまたま桔梗の実家である呉服店「阿紫屋」にお泊りしていたもので、「面白そう」と勝手についてきた。

 おれと芽衣を合わせて、総勢十七名。
 うーん、いささか戦力が過剰気味なような……。


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