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564 早押しボタン
しおりを挟む青鬼の長、萩野露草。
黄鬼の長、猩々木花駒。
ふたりの長の存在におれが恐れおののいている間にも、説明会は進行していき、ついにイベントの内容が発表されたのだが……。
ステージのうしろに設置されてある大型モニター。
画面に映し出されたのは、ボタン。クイズ番組とかの早押しで使われるようなやつ。
「これと同じ品が、この七宝院グランモール内に合計千個、隠されております。あぁ、ご安心を。隠されているとはいっても、少し注意をして探せばすぐに見つかるところに配置しておりますので。
で、皆さま方にはそれらを見つけ出し、ピンポーンと鳴らした回数を競っていただきます。なお、優勝および六位までの上位入賞者たちには豪華景品がご用意されておりますので、奮ってご参加のほどを」と司会役の女性。
ただし一度鳴らしたボタンはそれきりとなり、二度目はブブー。カウントされない。
鳴らした数のカウントは、参加者たちに貸し出される青の腕輪にて自動で数えられる。なおこの腕輪には発信機も内臓されており、参加者の位置情報や成果および心拍数や血圧などなど、健康状態がリアルタイムで運営側に伝わる仕組みとなっており、もしもの場合にはすぐにスタッフが急行する手筈となっているとのこと。
ようは宝探しゲームみたいなものである。
豪華景品と聞いて、目の色をかえる参加者たち。
ざわつく客席。するとその中にて毅然と挙手をする男性がいた。
すぐさま応じる司会進行役。
「そこの方、どうぞ、何がご質問でも」
「はい、豪華景品とはいったい……」
ズバリ切り込む男性。
この衆人環視下で挙手するだけでもたいした肝だというのに、そこを聞いちゃうのか。
なかなかの神経の図太さ。勇者におれは心の中で拍手を送る。
すると司会進行役に変わって、マイク片手に応答したのは萩野露草。
「そうですね。では逆におたずねしますけど、貴方は何が欲しいですか」
「え、私ですか。私ならばそうですねえ……、最近、動作が遅くなってきたのでそろそろパソコンを買い換えたいところですけど」
男性がそう口にすると「ふむ」とうなづいた萩野露草がにっこり。
「わかりました。ではもしも貴方が優勝した暁には、現時点で販売されているパソコンの中から最高スペックの品を進呈しましょう。ちなみにノート派ですか、それともデスクトップ? あぁ、もちろんデスクトップのときにはモニターやらキーボードなどの一式をご用意させていただきますので」
公然と確約を得た男性はあんぐりし、会場中がどよめきを抑えられない。
だってそうであろう。
とどのつまり、豪華景品とは「お好きなものをプレゼントします」ということなのだから。
たちまちそこかしこから手があがっては「クルマは?」「豪華クルーズ船の旅は?」「マンションは?」「家は?」「世界一周旅行は?」「お母さんの手術費用は?」「就職採用は?」「現金は?」なんぞという質問が飛び交う。
萩野露草はそのいちいちにサクサク答えていく。
「クルマは問題ありません。ただし車検費用やら保険、駐車場の用意などはお客様負担となりますので」
「豪華クルーズ船や世界一周旅行の場合は、もちろん最上位のコースをご用意させていただきます」
「マンションもいいですよ。ただし萩野グループが所有している物件に限りますが。それから『建物丸ごと寄越せ』などという無茶はどうかご容赦を」
「家の場合も萩野グループの管理している物件でしたらどうにか。土地代に関しては要相談ということで」
「手術に関しては、萩野グループが資本提供している病院への転院および手術を請け負いましょう。もちろん最高の医療スタッフをご用意しますし、術後のリハビリもばっちりお世話させていただきます」
「就職採用に関しては、社長権限にて採用することをここに約束します。やる気のある方は大歓迎ですからね」
「現金にて賞金として支払うことはダメですね。額によるとトラブルになりそうですし、なにより現ナマというのはいささか品位に欠けるかと。当方の企業イメージもありますので、どうかご容赦ください」
お金以外であらば多少の無理は通る。
萩野グループが総力をあげて応じると言われて、俄然、盛りあがる客席の面々。
だがそこで萩野露草はパンと手を打ち鳴らす。「皆さま、ご静粛に」
たちまち黙り込む一同を前にして、彼女は告げた。
「ただし、そうやすやすと欲しい物が手に入るとは思わないでくださいね。対価を得るのには相応の試練がつきもの。というわけで本日のスペシャルゲストの登場です」
萩野露草がパチンと指を鳴らしたのを合図に、もうもうとステージ上に焚かれたスモーク。
青緑赤黄ピンク、五つの色彩のスポットライトの明かりが乱舞し、まるで特撮ヒーロー番組のオープニング(ボーカル付き)のような曲がダンダバダァと流れ、「とぅ」
颯爽とあらわれたのは五人の戦士。
「速きこと風のごとし、ピンポンブルー」
「静かなるごと林のごとし、ピンポングリーン」
「侵略するごと火のごとし、ピンポンレッド」
「動かざること山のごとし、ピンポンイエロー」
「愛は地球を救う、ピンポンピンク」
「「「「「我ら五人そろってピンポンレンジャー」」」」」
ここにきてよもやの登場におれと芽衣はポカン、開いた口がふさがらない。
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