おじろよんぱく、何者?

月芝

文字の大きさ
上 下
352 / 1,029

352 猿力駆動式ダンボール巨人兵

しおりを挟む
 
 尾白たちレジスタンス突撃強襲部隊は、帝国の卑劣な罠にかかって絶体絶命のピンチ!
 それと時を同じくして、第三次大遠征の戦場でも新たな動きが……。

 ハイゼルコバ帝国陣営から出現した移動要塞。その要塞からの投ダンボール機による攻撃にさらされ、ズタズタに陣を斬り裂かれたケヤキ自由連合。
 進軍を開始した帝国軍が国道を渡り南下。
 迫る脅威に対抗すべく混乱する味方をとりまとめ奮戦をうながすのは、ケヤキ自由連合軍を率いる結城現代。
 どうにか陣容を整え迎撃へと移行しようとした矢先のことであった。
 さらなる脅威が戦場に降臨する。

 ゆらり、がしゃん。
 ゆらり、がしゃん。
 ゆらり、がしゃん。

 角ばった肩を左右に揺らしながら歩くのは、雲をつくようなダンボールの巨人。
 というのはいささか大袈裟だが、それでも小学校の体育館級の大きさを誇る移動要塞と並んでも遜色ない程度には立派なのっぽさん。
 長い手足をひょこひょこと動かしながら、前線へと向かってくる。
 その数は三。

 ありえない異形の登場におそれおののくケヤキ自由連合。
 それを前にして帝国兵の誰かが誇らしげに告げる。

「どうだ、おそれいったか? あれこそが此度の戦いの決戦兵器・猿力駆動式ダンボール巨人兵だ!」

 説明しよう。
 猿力駆動式とは人力のエテ公バージョンである。
 巨人の内部では複数のサルどもが古代ローマの奴隷のごとく「えんやこら」とダンボール製の歯車を押して回しては、せっせと動力を産み出しているのだ。
 ちなみに巨人兵に使用されているすべてのパーツはダンボール製である。ワイヤー類はダンボールの繊維を砕いてほぐして、ふたたび寄り合わせて紐状にするという念の入れよう。装甲の継ぎ目は宮大工の巧みの技を応用させてもらっている。
 帝国が誇るクラフトマスター渾身の力作。

  ◇

 味方の頭の上をひょいと超えて最前線へとあらわれたダンボール巨人兵。
 その足が無造作に蹴りあげられる。巻き込まれたケヤキ自由連合のダンボール戦士たちが多数、たちまち吹き飛ばされて強制退場させられる。
 その腕がぶぅんと横薙ぎ。まるでテーブルに積もったホコリでも払うかのような仕草。これによりやはりダンボール戦士たちがなすすべもなく散ってゆく。
 圧倒的であった。
 死神の巨体が戦場を席捲し、敵勢を蹂躙する。
 巨人と小人、あるいは子ザル同士のケンカに親ザルどころか、屈強なマウンテンゴリラの群れのボスがいきなり乱入してくるがごとき、おとなげのなさ。
 そんなシロモノが三体も暴れている。
 もはやケヤキ自由連合側の戦意は風前の灯火かとおもわれた。
 だが……。

「臆するな、自由と平等と怠惰を愛する誇り高きシティ・サバイバーたちよ。オレに続けーっ!」

 ダンボール巨人兵の剛腕の下をかいくぐり、暴風のごとき蹴りをかわし、突進するのは誰あろう結城現代。大将軍みずからが先陣へと立ち、戦場を駆ける。
 相棒の双剣を引っ提げ進む歴戦の猛者。
 その姿のなんと勇ましいことか。
 感銘を受け鼓舞された数多のダンボール戦士たちが、これに続く。
 一方的に散らされるばかりであったケヤキ自由連合側がついに反撃へと転じる。
 四方八方からダンボール巨人兵を囲んでの波状攻撃。
 まるで角砂糖に群がるアリのごとく、巨人兵へ次々とダンボール戦士たちが張りつく。

 いち早く巨人兵の足へ刃を突き立てた結城現代。
 一番槍の誉、雄叫びをあげつつ、そのまま巨人の身を伝ってのぼり始める。
 サルは木登りは大得意。町を拠点とするシティ・サバイバーとなったとてそれは変わらない。ブロック塀にビルディング、電柱などなど。日々コンクリートジャングルで鍛え上げた四肢が躍動する。
 勢いよくのぼってくる敵兵に気がついた巨人兵がこれを払い落そうとするも、今度はその腕に張りつき、さらに進む。
 で、首のうしろの方にて搭乗口らしき扉を発見!

「おらぁ」

 と蹴破り、結城現代は勢いのままに内部へと単身突撃を敢行。その戦いぶりはまさに鬼神のごとし。
 味方らもこれにわずかに遅れて続く。
 その結果、三体いるうちのダンボール巨人兵の一体を制圧することに成功する。
 で、せっかく鹵獲した決戦兵器、使わない手はない。すぐさま運用を開始。

  ◇

 ダンボール巨人兵同士の戦い。
 結城現代に鹵獲された機体が帝国側の機体へと襲いかかる。
 鹵獲機からの不意打ちショルダータックル。
 喰らって吹き飛ばされた帝国機、そのまま盛大にズデンと尻もちをつき、近くにいた敵味方を多数巻き込む。
 これを見た帝国機のもう一体が即座に状況を把握し、応援に駆けつける。手近な電線に片足をかけびよ~んと大きくジャンプ。巨体が宙を舞いそのままドロップキック。
 背中からこれをモロに受けた鹵獲機はたまらず転倒し激しく横転。これまた多数の敵味方を巻き込む。

 巨体同士がくんずほぐれつ三つ巴。
 その周囲では帝国軍と自由連合軍のダンボール戦士たちが入り乱れての混戦へと突入しており、上空を投ダンボール機より放たれたダンボール弾が飛ぶ。
 前線はすでにしっちゃかめっちゃか。

 現状を招いたのは帝国側の明らかなる失策であった。
 いっきに自由連合側の戦意を喪失させようと、決戦兵器の投入を急いだのが原因。いささかタイミングが早すぎたのである。
 いかにまだ移動要塞が健在とはいえ予断は許されない。
 戦局はますます混迷の度合いを深めてゆく。


しおりを挟む
感想 610

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

我が家の家庭内順位は姫、犬、おっさんの順の様だがおかしい俺は家主だぞそんなの絶対に認めないからそんな目で俺を見るな

ミドリ
キャラ文芸
【奨励賞受賞作品です】 少し昔の下北沢を舞台に繰り広げられるおっさんが妖の闘争に巻き込まれる現代ファンタジー。 次々と増える居候におっさんの財布はいつまで耐えられるのか。 姫様に喋る犬、白蛇にイケメンまで来てしまって部屋はもうぎゅうぎゅう。 笑いあり涙ありのほのぼの時折ドキドキ溺愛ストーリー。ただのおっさん、三種の神器を手にバトルだって体に鞭打って頑張ります。 なろう・ノベプラ・カクヨムにて掲載中

柳鼓の塩小町 江戸深川のしょうけら退治

月芝
歴史・時代
花のお江戸は本所深川、その隅っこにある柳鼓長屋。 なんでも奥にある柳を蹴飛ばせばポンっと鳴くらしい。 そんな長屋の差配の孫娘お七。 なんの因果か、お七は産まれながらに怪異の類にめっぽう強かった。 徳を積んだお坊さまや、修験者らが加持祈祷をして追い払うようなモノどもを相手にし、 「えいや」と塩を投げるだけで悪霊退散。 ゆえについたあだ名が柳鼓の塩小町。 ひと癖もふた癖もある長屋の住人たちと塩小町が織りなす、ちょっと不思議で愉快なお江戸奇譚。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜

菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。 まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。 なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに! この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。

記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派
ファンタジー
 勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"  その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。  そんなところに現れた一人の中年男性。  記憶もなく、魔力もゼロ。  自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。  記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。  その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。 ◆◆◆  元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。  小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。 ※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。 表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

処理中です...