寄宿生物カネコ!

月芝

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247 カネコ、レセプションに出席する。

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 突如、聴聞会に乱入してきたアツァーリの王さま。
 そのあとからひょっこり顔を出したのは、えらい学者先生である。
 どうやらワガハイへの元老院の暴挙を聞きつけて、先生が王さまを連れてきてくれたらしい。

「おー、おまえさんだな? すごい魔道車を持っているというのは? ずっと会うのを楽しみにしておったぞ。
 ガハハハ、なんだよ、シシガシラに似ていると聞いたが、ぜんぜんちがうじゃねえか。いっしょにするだなんて、そいつらの目はとんだ節穴だな」

 議場に踏み込んできたとおもったら、アツァーリの王さまはいきなりワガハイの方へと詰め寄り、笑顔でムギュっと抱きついてきた。
 挨拶のハグのつもりらしいだけど……ギチギチギチ、ぐ、ぐるちい。
 ちょっと小柄でずんぐりむっくりしているけど、王さまってばもの凄い力にて。

「ったくよぉ、エスカリオのオークションで、珍しい出物があると聞いて、政務を放り出して飛んできてみれば、ちょうどおまえさんが王都に来ていると知ってな。
 これぞ天の采配と感謝したものよ。
 なのにお目当ての人物になかなか会えんではないか。
 で、何度、申請を出してもあーだこーだと要領の得ぬ返答ばかりで、首を傾げておったのだが、よもやこんなところに引きずり込まれておったとはなぁ。
 おかげでずいぶんと時間をムダにしてしまったわい」

 フンっと鼻を鳴らしては、周囲をギロリとひとにらみ。
 議場内のざわめきがピタリとやんだ。
 饒舌だった元老院の長老方が、とたんに口をつぐむ。
 う~ん、毒をもって毒を制すではないけれど。
 いかに力を持つ元老院とて、他国の王さま相手では強くは出れない。
 それを見越して、えらい学者先生が手配してくれたようだ。

「七日もやったんだ、もう十分だろう。こいつは連れていく。いいよな?」

 物言いことはそこそこ丁重だが、有無を言わさぬ威圧が込められており、その意は「まさかとはおもうけど、オレさまに恥をかかすようなこと、しないよなぁ」である。
 かくしてワガハイは聴聞会から解放された。
 そして今度はアツァーリの王さまからの質問攻めに合うハメに……

  〇

 広々とした会場に流れるのは楽団による生演奏♪
 照明は落ち着きのある色味の暖色系に統一されており、とってもムーディだ。
 高い天井は全面がガラス張りにて。
 見上げた先には夜陰に浮かぶ摩天楼の姿があった。
 背景にあるブランカグア連峰のシルエットが、ライトアップされた高層建築の存在感をいっそう際立たせている。

 会場の壁際には、いくつもの料理が盛られた皿があって、好きな物を好きなだけとって食べるビュッフェスタイル。
 王城の料理人が手がけただけあって、どれもとっても美味しそう。
 ところで知ってる?
 ビュッフェとバイキングのちがいについて。

 どちらも似たようなものだけど、じつはちょっとちがう。
 ビュッフェはフランス語でセルフサービスの食事を指す言葉で、立食や着席の形式がある。
 バイキングはそのもの、食べ放題形式の食事を表している。

 ――あれ? だったらやっぱり同じようなものじゃないの。

 と思われるかもしれないが、両者の差はずばり料金である。
 一定の金額を払ったら、好きなだけ食べていいのがバイキングスタイル。
 対してビュッフェスタイルは食べた料理の数によって料金が変わる場合があるのだ。ばかりか『おかわり不可』なんてケースもある。

 このように細々としたちがいはあるものの、現在ではビュッフェは立食、バイキングは着席スタイルと区別している。
 なおバイキングスタイルの発祥は日本のホテルだったりもする。

 首に蝶ネクタイをつけた格好で、ワガハイはレセプション会場に混じっている。
 聴聞会からようやく解放されたとおもったら、今度はアツァーリの王さまからの質問攻めにあったあげくに、カネコモービルを一台用立てる約束までさせられたばかりか、その流れのままにパーティー会場へと連れてこられた。

 このパーティーは賓客らをもてなすためのモノだ。
 珍しい品が多数出品されるという今回のオークションに参加すべく、各国からけっこうな身分の者らが集まっている。
 なかには王族などの国賓級もまじっている。
 とはいえ数が数なので個別に歓迎していてはキリがない。
 そこでまとめてやってしまおうと。
 ようは前夜祭のようなものである。

 アツァーリの王さまも主賓のうちのひとりだったもので、「陛下、そろそろお時間が」と側仕えの者が呼びにきたところで「ちっ、めんどうだがしょーがねえ。っと、そうだ、ついでだから、おまえさんもいっしょに来いよ」とワガハイも強引に誘われたという次第。

 連日に渡って行われた聴聞会が終わったとおもったら、一転して華やかなパーティー。
 う~ん、落差が激し過ぎる。

「めまぐるしいのにゃあ。おちおち食事も楽しめやしない」

 などと言いつつ、ワガハイは壁際に張り付いては、パーティーそっちのけで料理を物色している。
 そんなワガハイの脇をコツンと肘で小突いたのは、えらい学者先生だ。

「んにゃ? 何にゃん。先生もお肉が欲しいのかにゃあ」
「ちがう。アレを」

 指差した先にいたのは、周囲とは一線を画した装いの人物にて。
 仮面の令嬢であった。あいかわらずの異様っぷりにて、本日は能の般若っぽい仮面をつけている。
 そんなご令嬢が、つかつかとこちらに近づいてきては「またお会いしましたわね。ごきげんよう」と優雅なカーテシーを披露した。


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