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235 カネコ、おおいに驚愕する。
しおりを挟むガタクタ屋の軒先にて捨て値で売られていたパペット型のゴーレム。
その修理を完了したタイミングで、えらい学者先生が宿に戻ってきた。
「これは何じゃい?」
「ん、これはサレーオ作のゴーレムとおもわれる品だにゃあ」
「なっ、なんじゃとーっ!」
ジジイ、大興奮。
それもそのはずだ。えらい学者先生はワガハイがサレーオから受け継いだ『魔術大全』を手書きでコツコツ写すほどの大ファンにて。
なおその写本作業ではあるが、諸事情によってまだまだ道半ばである。
完成するのが先か、先生の寿命が尽きるのか先か、微妙なところである。
まぁ、そんなことはさておき、パペットだ。
「サレーオの作品じゃと……現存するモノは一体もなかったはずなのに。いったいそんなシロモノをどこで手に入れたんじゃ?」
「どこって、町にあったガラクタ屋だにゃん」
「ガラクタじゃと? ということは、壊れておったのを修繕したのか」
「そうだにゃあ。幸いなことに、内部の傷みはそれほどでもなかったので、ワガハイの手にかかれば、ちょちょいのちょいだにゃあ~」
「なんと! にしても、よもや実物をこの目で拝める日がこようとは。ありがたや、ありがたや、ナムナム」
パペットに手を合わせるえらい学者先生。
気持ちはわからなくもない。けれども、これから起動しようというのに、なんだか縁起が悪いのでヤメて欲しい。
などと考えつつ、ワガハイは起動スイッチをポチっとな。
……
…………
………………
………………………………………………あれ? 動かない。
ウンともスンともいいやしない。
もしかして失敗した?
「おかしいのにゃあ~。ちゃんと魔力は通っているし、回路に異常は見られないのにゃん。魔晶石も上等なヤツに入れ換えたのに………」
「上等な魔晶石?」
「そうだにゃあ」
ずっとアイテムボックス内で死蔵……ゲフンゲフン、もとい大切に保管してあったのを奮発した。
ちなみに使用したのは、カヴァレイロフォルミガの魔晶石である。
カヴァレイロフォルミガというのは、大きな軍隊アリのような昆虫型魔獣の群れの一員にて、女王であるヴァシーリサフォルミガを守る銀騎士だ。めっちゃ強くて、このワガハイもタジタジになったほどの相手である。
強いだけあって立派な魔晶石の持ち主でもあった。
素寒貧になったときに、売って糊口をしのごうかとも考えたが、いかんせん品が品なだけに処分するのにも手間と時間がかかる。
これほどの逸品ともなれば、中央のオークションとかギルドの本部を経由することになるせいだ。
それを無視して売りさばくことも可能だが、やったら足下をみられて買い叩かれてしまう。散々に苦労して手に入れたのに、それはいささか業腹にて。
だから、ずっと所有していたのだけれども、せっかくの機会だからドーンと使っちゃった! てへ。
ワガハイの説明を聞いて、えらい学者先生が「やれやれ」と呆れた風に小首を振り言った。
「動かないのって、それが原因じゃないのか?」
あまりに高出力な魔晶石を使用したがゆえに、回路の方が処理できずにショートしたのかもしれない。
たしかにそれは一理ある。
分不相応な魔晶石を埋め込んだせいで、本体がびっくりしちゃったのかも。
ならば別の石で試してみるべきだろう。
だからワガハイは再セッティングしようと、パペットに手をのばした時のことである。
パペットが不意にゴロンと横に転がり、ワガハイの手を避けたもので「ん?」
なにかのひょうしで動いたのかと、もう一度掴もうとしたら、またしてもゴロンとしたもので「んんん?」
う~ん、あきらかにこちらの動きに反応している。
「……というか起動しているのにゃら、とっとと立つのにゃん」
爪をジャキンとのばして、ちょっと脅してみた。
するとパペットは、いかにも渋々といった感じてのそのそ立ち上がった。
そして言った。
「なんだシシガシラじゃなかったのか。てっきりそうだとおもったから、死んだフリをしていたんだよ。……ったく、まぎらわしいツラをしやがって」と。
これに「おぉーっ! 立った、パペットが立った!」と、どこかで聞いたことがあるような台詞を口にしては、はしゃぐえらい学者先生を横目に、ワガハイはギョッと大きく三つ目を見開いていた。
なぜなら、パペットがベラベラとしゃべっているからだ。
少なくとも、ワガハイが知るゴーレムで言葉を発した個体はひとつもいない……
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