寄宿生物カネコ!

月芝

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233 カネコと老人の旅、八日目。

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 泉の精霊と商隊との醜い争いに巻き込まれたくなかったワガハイたちは、そそくさと退散する。
 で、ふたたび王都を目指しカネコモービル・エボルヴを走らせて、到着した次の街で一泊。
 なんだかんだで、はじめてちゃんとした宿で、えらい先生ともどものんびり過ごす。

 素晴らしいことに温泉付きの宿にて、ワガハイたちばビバノンノ♪
 おおいに羽をのぼし、旅の疲れをとる。

「……にしても、今回の旅は散々だにゃあ~」
「くくく、カネコが歩けばトラブルに当たるじゃな」

 王都への旅。
 初日……
 目当ての宿が改装中につき、代わりに泊まったところが、まぁ、酷かった。
 二日目……
 橋が落ちており迂回を余儀なくされる。途中、盗賊の村に誘い込まれて一服盛られた。
 三日から四日目……
 立ち寄った街にて再開発利権にまつわる騒動に巻き込まれる。
 五日目……嵐の前の静けさが、不気味?
 六日目……ケラケラノドンの群れに襲われている商隊と遭遇し、臨時の用心棒に雇われたものの、その商隊は違法なブツ『魔獣のタマゴ』を運搬している連中であった!
 七日目……このままでは王都が危ない! そう判断しワガハイたちはタマゴをケラケラノドンの群れに返すように、一計を案じる。

「ちっともうれしくないイベントばかりが、盛りだくさんだにゃん!」

 とんだ珍道中にて。
 しかも報酬が期待できるのって、盗賊どもの村から回収した品を返却したお礼ぐらいにて、それとてもずっともっと先の話。
 骨折り損の草臥れもうけとは、まさにこのこと!
 さすがのワガハイも、げんなりしている。
 えらい学者先生もまた……
 そこで相談の上、ワガハイたちは、この街でもう一泊することに決めた。
 とどのつまり、八日目は休養日ということである。

  〇

 えらい学者先生は朝食も食べずに、いそいそと朝市へと出かけて行った。
 またぞろ掘り出し物の魔道書とかを探すつもりなのだろう。元気な年寄りである。
 ワガハイは興味がないので、のんびりさせてもらう。
 朝湯を浴びて、たらふく朝飯を喰らい、膨れた腹にてスピーと二度寝をする。
 で、ムクリと起きた頃にちょうどお昼ご飯の時間となっていたので、宿を出て外へと向かった。
 あー、この宿、朝と夜は食事が出るんだけど、昼はナシ。
 別料金を払えば用意してくれるけど、せっかくなので街ぶらにて食べ歩きでもしようとワガハイは思い立つ。

 あちこちの屋台をハシゴしては、料理をつまむ。
 これぞ旅の醍醐味! なのだけれども……

「味はいいのにゃあ~。でもボリュームがいまひとつなのにゃん」

 串焼きも、甘味も、煮込み料理も、調味料や砂糖がふんだんに使われており、味も申し分がない。
 王都に近い分、スパイスなどが手に入りやすいのだろう。
 値段だってけっして高くはない。
 が、量がいまひとつ。
 少ないわけではないけれど、ちょっと物足りない。
 おそらくは土地柄のせいだ。
 この辺りは内地にて、王都にも近く治安がいい。
 定期的に国の騎士団が巡回していることもあって、魔獣の被害もあまりない。
 でもそれゆえに冒険者稼業にとっては、シビアな土地だ。
 狩る獲物がいなければ商売あがったり。
 だからたいていの冒険者らは辺境を目指し、そちらに拠点を置く。

 冒険者が多数滞在しているトライミングでの商いは、彼らをメインの客層としている。
 体が資本の連中だ。じつによく食べ、よく呑む。
 上品さは二の次にて、「うまい、はやい、やすい」が大事にて、食べ物はボリュームがあって腹が膨れてなんぼ。
 そんな都市での暮らしに馴れているワガハイからすると、王都寄りになればなるほどに、う~ん。

「いちおうアイテムボックス内にストックはあるけど、この先、何があるかわからないのにゃあ~。だからここはガマンしておくのにゃあ~……って、あれは?」

 食べ歩きしていたワガハイが目を留めたのは、新たな屋台ではなくて、古びた骨董屋みたいな店である。
 骨董屋とは言ったが、拾ってきたガラクタを並べているだけのような品揃えにて、まともな商品なんぞはひとつもありゃしない。
 なのに、ワガハイが「おや?」と気を惹かれたのは、店先にあった均一ワゴンに紛れていたモノ。
 このワゴンの中の品は、どれも銅貨三枚で販売されている。
 折れた剣にへこんだ盾、欠けた茶碗や皿、ヒビの入っている手鏡、ボロ布、端切れを束ねたもの、壊れている魔道具などなど。
 そんなガラクタの山になかば埋もれていたのはパペットだ。
 大きさは50センチぐらいで、見た目は美術で使うデッサン人形に似ている。
 ぱっと見には壊れた人形のようにしか見えない。
 けれども……

「むむむ、これってもしかして……」

 ワガハイの第三の目がキランと光る。
 パペットをワゴンから発掘したワガハイは、店主に銅貨三枚を渡してこれを宿へと持ち帰る。
 アイテムボックスに入れる際に、ざっとパペットを確認し、ワガハイは「やっぱり」とほくそ笑んだ。
 なぜなら、このパペットはただの人形ではなかったから。

 小型のゴーレム。
 そしておそらくはサレーオの作品だ。


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