寄宿生物カネコ!

月芝

文字の大きさ
上 下
214 / 266

214 カネコに召喚状。

しおりを挟む
 
「おい、ワガハイ。おまえさん、ちょっくら王都へ行ってこい。っていうか、行け」

 月から戻ったワガハイは無一文になった。
 しかし生きていくには先立つモノがいる。
 だから公園を管理するかたわら、清掃活動や害獣駆除の依頼を中心にして、都市内でコツコツ働いていたのだけれども、いきなり冒険者ギルドから呼び出されたとおもったら、ギルド長からこう言われた。
 おかしい、呪いならば少なくない額の寄進にて、老神父さまに払ってもらったはずなのに。

「へっ、王都に? にゃんで?」
「何で……だと? あんなゲテモノを持ち込んだせいに決まってるだろうが!」

 あんなゲテモノとは、月から持ち帰ったお土産類のことである。
 帰還後、ワガハイは自分の身に起きたことを、包み隠すことなくギルドに報告した。
 いやほら、エイリアンどもの前線基地はめちゃくちゃにしてやったけど、連中はなおも健在にて。
 虎視眈々と侵略の機会をうかがっている。
 すぐそこに迫る危機。
 不本意ながら関わってしまった以上は、知らんぷりするのもちょっと……
 だから報告書をあげた。
 いっしょに月の石、キラキラのダイヤっぽいパネル、大型エイリアンの遺体を提出する。

 当初、ワガハイの話を酔っ払いの与太話だと、まともに取り合わなかったギルドの受付の七人のおっさんズも、エイリアンの実物を目の当たりにしてさすがに表情を変えた。

「なんだこりゃあ?」
「えっ、ワガハイの話ってマジだったのか」
「こんな魔獣、見たことねえぞ」
「図鑑にも載ってないな」
「ちょっとフォルミガに似ているか」
「てっきり冗談かとおもったのに」
「おいおい、だとしたらシャレにならんぞこりゃあ」

 当然ながら話はすぐに上へとあがり、ギルド長も「なんじゃこりゃー!」
 検分役を頼んだ解体のオバちゃんと、たまさか居合わせたえらい学者先生もそろって「「なんじゃこりゃー!」」

 さらにワガハイが、あの消えたりあらわれたりするナゾの塔の正体が、じつはツクシ型のロケットで、現地希少生物の捕獲採集目的にバラまかれたモノなので、うっかり踏み込んだら強制的に月へと連れていかれちゃうから「危ないのにゃあ~。ふつうに死ぬのにゃあ~。でもって、標本にされて陳列棚いきだにゃあ~」
 と、にゃあにゃあ説明したものだから、一同騒然となった。

 なのでギルド長は「こいつはえらいことになった」とあわてて本部に連絡したものの、「はぁ?」と本部側の反応は鈍かった。
 そこでエイリアンどもの存在を示す証拠となるサンプルを送ったところ、本部側も「なんじゃこりゃー!」

 月からの侵略者。
 ぶっちゃけ、どこにいるのかわからない魔王やら破人どもなんぞよりも、よほどヤバい案件にて。
 とてもではないが冒険者ギルドだけでは抱えきれない問題ゆえに、当然ながら国側にも話が伝わり、王さまは「えーっ!」
 驚くあまりあやうくかぶっていた王冠を落としそうになったとか。
 たまたま外交と交流のために訪問していた近隣国の王さまも「えぇーっ!」びっくりして腰を浮かせたひょうしにグキリ、魔女の一撃にて「あんぎゃーっ!」
 大切な賓客が負傷したもので、城側も「えらいこっちゃ」と対応におおわらわ。
 さすがにこんな話を表には出せない。うっかり漏れたら大混乱必至にて。
 すぐさま情報統制が行われた。
 しかし民草にこそ広がらないものの、水面下では主要組織や各国の上層部にじんわり伝播していく。

 一方でひと通りの報告をし、持ち帰ったブツもギルドに丸投げしたワガハイはシレっと日常に戻っていたのだけれども、そこへ「すみやかに王都へ出頭せよ」との召喚令状が発せられてしまったという次第。
 上のえらい人たちとしては、当事者からより詳しい話を聞きたい、いろいろ直接訊ねたいということなのだろうけど、迷惑な話である。
 しかも向うから呼びつけておいて、移動および諸経費が自腹とかヒドクない?

「ちなみに応じないのは勝手だが、そうすると次は檻に入れられて運ばれることになるぞ」

 と、ギルド長。

 物見遊山がてらブラブラ食べ歩きなんぞを楽しみつつ、王都への旅を楽しむか。
 強面の警吏に首根っこを掴まれて、鎖で重石をつけられて、乗り心地最悪なカゴにゆられて運ばれるか。場合によっては剣姫と魔剣が出張ってくる可能性も大。
 どちらがマシかなんて考えるまでもなかろう。
 いかにモノグサなワガハイとて檻での荷車移動はイヤだ。
 そしてあのイカレポンチコンビといっしょに行動するのは、もっとイヤ!

「ぐぬぬ、ただでさえ懐具合が厳しいのに」
「あー、そのことだが朗報がある。おまえさんが持ち込んだ月の品々だが、国が買い取ってくれることになったってよ。そのための交渉もあっての今回の呼び出しなんだよ」
「んにゃ!? それは本当かにゃん! そういうことなら話は別にゃん」

 かくしてワガハイはエスカリオ国の王都へと赴くことになった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
 もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。  誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。 でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。 「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」  アリシアは夫の愛を疑う。 小説家になろう様にも投稿しています。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...