寄宿生物カネコ!

月芝

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209 カネコ、公園は社会の縮図。

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 ――ぐぬぬ、失敗した。

 浅慮であったと猛省する。
 適当に子どもたちを追い払おうと、オモチャを与えたら逆に増えてやんの。
 そのせいで、いつも以上の賑わいを見せる昼下がりの公園。
 元来、公園とは子どもたちの声が絶えぬものだし、そういうもの。
 それに片隅を間借りしているのはこちら側だ。
 だから「やかましい!」なんぞと文句を言うのは筋がちがう。

 わかっている。
 ワガハイとてそんなことは、よ~くわかっているのだ。
 だがしかし……

「なんか、めちゃくちゃ増えてるのにゃん」

 公園大盛況、それも過去イチにて。夏場の市民プールのごとく、イモ洗い状態に近い。
 どうやら珍しいオモチャで遊べるというウワサが、ワガハイが痛む首を抱えて悶々としているうちに、近隣に広まったらしい。
 にしても情報の拡散スピードが尋常じゃない。
 う~ん、おそるべし、子どもたちネットワーク。
 でもって、当然ながら公園に集まる子どもが増えれば、オモチャの数が足りなくなるわけで……

『順番に、みんなで仲良く遊びましょう』

 なんて暗黙のルールが有名無実化するまで、さして時間はかからなかった。
 公園は社会の縮図である。
 子どもたちは大人たちを見本にして育つ。
 優れた観察眼を持ち、じつによく視ている。吸収率もバツグンにて、良い事も、悪い事もすぐにマネしちゃう。
 よってトラブルが続発するまでに、さして時間はかからなかった。

 キャッキャというはしゃぎ声が、じきにオモチャを巡っての言い争いへと……

 ――んにゃっ、一触即発!?

 この事態にワガハイはあわてた。
 お髭もビビビと震えたもので、「あっ、本格的にマズイのにゃん」
 カネコのお髭はチャームポイントなだけではなくて、迫る危機を察知するレーダーの役割りを担っている。「なんかヤバいよ」と教えてくれるのだ。
 それが激しく警鐘を鳴らしている。
 このままだと大事(おおごと)になると懸命に訴えている。

 しょうもないケンカの末に怪我なんぞをしたら、今度はきっと親が出てくる。
 忘れてはいけないのが、ここは辺境の冒険者の街だということ。
 住んでる連中も血気盛んでタフなヤツばかり。その辺の主婦ですらもが、いざともなれば武器を手に取り、家族や財産を守る。
 そんな親御さんらが怒り心頭にて一堂に介したら、公園がたちまち血で血を洗う闘技場になってしまいかねない。

「うー、教育上、よろしくないのにゃあ~。あとワガハイの精神衛生上もよくないのにゃあ~」

 しかも騒動の発端となったワガハイの責任問題にまで発展しては、またぞろ獣人の婦警さんに逮捕されて留置所のお世話になりかねない。
 留置所での寄宿生活は意外と快適なのだが、いかんせんメシの量に不満がある。
 おかわりは二回までとかケチくさい。盛りも少ない。お茶も出ないし、オヤツや夜食がないのもちょっと……

 だからワガハイは重い腰をあげようとしたのだけれども、とたんに「アイタタタ」
 首がズキズキしちゃう。
 アムールトラほどもある体格がわざわいする。
 頭が重い! 首へかかる負担がダイレクトに痛みに直結する!

「くっ、こうなったら」

 地魔法、発動。
 即席でこさえたのは首コルセット。
 これでしっかり頭部を支えたところで、「どっこらせ」とカネコドームの外へ出た。

  〇

「ふぃ~、危ないところだったのにゃん」

 ワガハイは冷や汗だらだら。
 実際のところ、集団乱闘が勃発する一歩手前にて、あと少し介入が遅れていたら手後れになるところであった。
 が、ギリギリ間に合った。
 とはいえ興奮しているキッズたちに、いくら言葉を投げかけたところでムダだ。ワガハイの言うことなんぞ、ちっとも聞きやしない。
 そこで……

 ワガハイは「ふんぬ!」
 四肢を大地に踏ん張っては、魔力を解放し、地魔法にて土を弄っくっては、公園内を遊具満載のワクワクパークへと造り変えてやった。

 シーソー、ブランコ、箱型ブランコ、ジャングルジム、回転ジャングルジム、回転塔、大型すべり台、うんてい、のぼり棒、ロープウェイ、スプリング遊具、平均台、鉄棒、振り子みたいに乗って遊ぶロッキング遊具、お寺の鐘を突く棒みたいな動きをする遊動木、砂場、土俵、遊び方がよくわからない複合遊具などなど。

 記憶にある遊具をおもいつくままに再現する。
 ついでにミニ四駆っぽいのを走らせるコースと、ミニゴーレムたちをファイトさせるための対戦台、園の外縁部分をぐるりと囲むようにしてゴーカートとゴーレムポニー用のコース。
 だけでなくオマケに線路を繋いで、ゴーレムミニ鉄道までポッポと走らせる。
 ついでにオモチャ類も大放出してやった。

 とたんに喧騒は歓声に変わった。
 かくして公園危機は去ったかにおもわれたのだけれども……

  〇

 ガシャン。

 重たい音を響かせては鉄格子の戸が閉じられ、ワガハイは衛士隊の留置所に収容された。

「納得いかにゃい! どうしてなのにゃん?」
「どうしてって……そりゃあ、公園を改造したからだろう。公共の場所を勝手にイジったらダメじゃん」
「………………」


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