寄宿生物カネコ!

月芝

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204 カネコ、噴水広場に辿り着く。

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 王配エイリアンが駆る丸い機体を撃破!
 とたんに残された二機はコントロールを失い、倒れてきたデカ蛍光灯に衝突して爆ぜた。
 ワガハイの勝利である。
 が、のんびり余韻に浸っている暇なんてない。
 なにせワガハイ自身が現在、崩壊を続けている現場の渦中に取り残されているもので……

「すぐにここから逃げないと。でも上はちょっと厳しそうだにゃあ」

 大中小、破片の雨が間断なく降り注いでいる。
 もはや嵐のような激しさにて、あのなかを駆け抜けるのは、いかにワガハイでもムリだ。
 さりとてここは竪穴の底の底。これ以上、下へはいけないし、キョロキョロと周囲を見渡すも、作業用の通路とかも見当たらず、どこにも行けそうにない。

「となればここでやり過ごすしかないにゃあ~」

 そこでワガハイは水魔法を発動して、作り出したのは氷のカネコドーム。
 ただし、たんに水を固めたものでは強度が全然足りないので、周囲にある瓦礫を混ぜ込んだ複合タイプだ。
 骨組みを瓦礫でこさえて、それを氷で固めた即席のシェルター。
 そこに引っ込み、ワガハイはしっぽを丸めて騒ぎがおさまるのをじっと待つ。

  〇

 崩壊ドミノが終わった時、竪穴の底はびっちり瓦礫で埋もれていた。
 数本の巨大蛍光灯がかろうじて残っているものの、真っ直ぐに立っているモノはなく、みなピサの斜塔のように傾いている。
 そのうちの一本から不意にパキッと音がしたとおもったら、スーッと横線が走り、先端の部分がズレ落ちていく。

 奥からひょっこり顔を出したのはワガハイである。
 シェルターにこもったおかげで、瓦礫に潰されるのは避けられたものの、埋まった竪穴の底に取り残されたもので、「う~ん、どうしよう……」
 困っていたら、目に入ったのがたまさか近くにあった巨大蛍光灯の一本である。
 ざっと調べてみたら原型をとどめており、上までのびていたから、これをトンネルとして脱出したという次第。

「ふぃ~、助かったのにゃん。意図したわけじゃないけど、結果オーライだにゃあ~」

 鏡の間は完全にダメになった。
 これでエイリアンどもの侵略計画も大幅な修正を余儀なくされるはず。

「ところで黒のベトベトさんは……っと、あっ! いたいた、おーい」

 ベトベトさんはがっつり崩壊に巻き込まれていた。
 けど変幻自在であるがゆえに、すき間に潜りこんで事無きを得る。
 しゅるしゅると戻ってきたもので、ベトベトさんを影に収容し、ワガハイは急ぎその場を離れた。

  〇

 目的は達した。
 あとは敵拠点から脱出して、帰還するだけである。
 でも、そのために必要な脱出用のロケットがぜんぜん見つからない。

「う~ん、飛ばすものだからてっきり地表近くの階層にあるはずとにらんだのだけど、ちがったのかにゃあ~」

 蜂の巣をつついたような騒ぎのなかをコソコソ。
 下層から上層へと移動したワガハイは、さっそくロケットを探すも、発着場らしき施設がどこにも見当たらない。
 というか探す範囲が広すぎて、たとえあったとしても辿り着けそうにない。
 エイリアンどもの拠点は縦にだけでなく、横にも広かった。そのくせアリの巣みたいに入り組んでいるし。

「不親切だにゃん! まったくなってないのにゃん!」

 案内板のひとつもないことに、ワガハイはプンスカ。
 ぶつくさ文句を言いながら探索を続けていると、鼻先がひくひくり。

「んにゃ? これは……水の気配かにゃあ、はて?」

 ニオイを辿っていく。
 行きついたのは憩いの噴水広場みたいな場所である。
 チョコレートファウンテンっぽい天辺から滔々とあふれている水が、滑らかに流れ落ちては、受け皿となっている小池の部分へと注がれている。
 派手さはないけれども、なかなかの水景にて。

「ふ~ん、休憩所かにゃあ?」

 などと感心しつつ、小池を覗き込んだワガハイは「うわっ!」
 ぴょこんと跳ねておもわず大きく後退る。
 水面に映っていたのはキュートなカネコの顔ではなくて、眉目秀麗なご尊顔だったもので。ワガハイとは似ても似つかない、金髪ロン毛の男か女かわからない中性的な麗人。
 だが見覚えのある人物にて、ワガハイは「にゃ、にゃんでおまえが!?」

 涼やかな目元を細めては微笑むのは、泉の精霊であった。


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