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202 カネコと王配。
しおりを挟む突然だけど、みんなはおでんのタネなら何が好き?
ワガハイは、こんにゃく、がんもどき、なると巻きかな。
三角、丸、四角……わかるヒトにはわかる組み合わせ。
まぁ、そんな小ネタはどうでもよろしい。
いまはこちらへと向かってくる謎の飛行物体ら三機について。
形がまんま、それなのである。
ひとつひとつが全長10メートルほどもあろうか。大きさとしては零戦ぐらいにて、いまどきの戦闘機と比べるとやや小ぶり。
それが轟々と飛んでいる。
ずんぐりした見た目に反して動きは軽快にて、ベトベトさんの手をするりと掻い潜り、乱立する巨大蛍光灯の合間を縫っては、最深部の鏡の間へと……
そのまま激突するかの勢いにてやってきた奇妙な飛行物体たち。
ワガハイの目の前でくりんと急速反転したかとおもったら、宙返りを決める。
からの……
変形合体!
三位一体となってあらわれたのは巨大な人型!?
鋼のボディを持つ、黒鉄の勇姿。
でも、スーパーだけどスーパーなロボットではない。
全体のフォルムがどことなく作業用のフォークリフトっぽい。
実際のところ両腕の先端がモノを持ち上げる時に差し込む『フォーク』と呼ばれる部位にそっくりだし。
なにより胸元にある運転席がオープンタイプで、操縦している者の顔がモロ出しなところも、またアレを彷彿とさせる。
でもって、そんなフォークリフトっぽい巨大ロボットに搭乗していたのは、エイリアンなのだけれども。これまで見かけてきた連中とはまたちがったタイプにて。
なんというか小さいのだ。
女王のような威厳もなければ、ザコ兵どものような活気もなく、大型みたいに荒々しさも皆無。
例えるならば雰囲気は家庭に居場所がなく、妻子からは無視をされ、家で飼っているハムスターにすらも舐められている草臥れた五十代のサラリーマン。寂れた漁港ばりの哀愁を漂わせている。
そんな草臥れたエイリアンが、ブツブツブツ……
『しんどい、しんどい、しんどい、ねむい、ねむい、ねむい、きつい、きつい、きつい、いっそ殺せよ、もうヤダ、オレを殺してくれ』
なんぞとつぶやいている。
ネガティブ発言が頭の中へと直接流れ込んでくる。
それが呪文のようにて、めちゃくちゃうっとうしい! こっちまで気が滅入ってクサクサしてくる!
でも……
「女王と同じ念話!?」
遠路はるばる月まで来て、言葉を発した相手に遭遇したのは、これで二例目である。
それすなわち目の前の相手が女王ばりに高い知能を持つということ。
只者じゃない。
すると続けて脳裏に響いてきたのは、こんな言葉であった。
『恐妻、恐妻、恐妻……』
それでワガハイはピンときた。
「あっ、こいつ、たぶん王配だにゃあ~」
王配とは、女王と結婚した配偶者に与えられる称号である。
つまり彼は月の女王さまの旦那さま。
かたわらにて公私にわたって妻を支える立場。
組織のナンバー2といっても過言ではない、とってもえらいヒト。
なのだけれども……このウツウツ具合。
夫とは名ばかりにて、日々昼夜関係なく奴隷のようにこき使われている姿が容易に目に浮かぶ。
「……っていうか、最前線に投入するとか鬼嫁にもほどがあるにゃん!」
暴れている張本人が言えた義理ではないが、さすがにこれはヒドイ。
そんな王配エイリアンが操る巨大ロボが、右腕をこちらに向けたとおもったら、いきなり飛んできたのはロケットパンチ!
しかし、その攻撃ならばワガハイは知っている。
だから余裕でひょいっとかわそうとした時のことであった。
コの字型をした突端がパカッと開いたもので「にゃっ!?」
ばかりかドリルのようにクルクル回転まで始めたもので「にゃにゃ!?」
チョキだったのが急にパーになっちゃった。
そのためワガハイはかわしきれずに、ドンッ!
接触して撥ねられてしまった。
吹き飛ばされたワガハイは近くにあった巨大蛍光灯にぶつかり「ぐぅ」と倒れ伏す。
そこへ王配エイリアンからの追撃。
巨大ロボの背中からにょきっと生えたのは二本のツクシ。
ワガハイを月へと運んできたロケットに似ているとおもったら、それが発射されて向かうは、当然ながらワガハイの方である。
――ツクシ型ミサイル!
あわてて立ち上がり、ワガハイはその場を離れる。
が、逃げられない。
ミサイルがどこまでも追いかけてくるもので、ワガハイは「ぎにゃーっ! こっち来んな」と逃げ回るハメになった。
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