寄宿生物カネコ!

月芝

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198 カネコとエイリアン(大)

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 竪穴の深部へと向かう途中、立ち塞がったのは番人の大型エイリアン。
 恐竜ほどもあり、その凶暴性は群を抜いている。
 そんなヤツとの戦いのさなかのことだ。

「あれ?」

 ワガハイはふとおもった。

「エイリアンってば、もしかしてワガハイと同類なのでは?」と。

 御存知の通り、ワガハイは寄宿生物カネコである。
 その怠惰っぷりは他の追随を許さず。日がな一日をゴロゴロ過ごしては、貴重な時間を浪費し、他人の金銭で飲み食いすることを至福としている。タダ酒、最高!
 息をするのもめんどうくさい、働いたら負けだと考えており、座右の銘は不労所得。
 万事において活力に乏しく、いろいろ枯れており、せっかく備わった能力をほとんど活かせていない。あんまりにもやる気がなさ過ぎてレッドリスト入り。筋金入りのナマケモノである。
 とは鑑定さんの情報にて。

 そして月のエイリアンどもだが、もしも映画みたいな習性を持つのであれば、星から星へと股にかけて大移動をしては、移住先にとり憑き、骨の髄までしゃぶり、現地人を苗床にしてタマゴを植えつけては繁殖し、増え過ぎたらまた新天地を求めて……をくり返す。
 共生……といえば聞こえはいいが、ようは寄生である。
 他者にべったりと依存しては喰い物にし、一方的にサービスを享受し、対象が朽ち果てるまで持続的に搾取する生物にて。

 とどのつまり性質の悪さを比べたら『寄生≧寄宿』の式が成立する。
 似て非なる者。なれど、たかられる側からすれば似たり寄ったりでもあるわけで……
 そのことにハタと気がついたワガハイは愕然とし、とっても悲しい気持ちになった。お髭としっぽもへにょん。
 だがしかし、次にふつふつと湧いてきたのは怒りだ。

「いっしょにするにゃ!」

 とおもった。
 だからその猛る想いをググっと込めて魔法を放つ。
 氷を槍を数十も同時に出現させては、これを一斉に飛ばす。
 当たればズタズタの串刺しだ。
 が、すべての攻撃は寸前で止められてしまう。
 まるでドロに足を突っ込んだときのよう。ずぶりと氷の槍の突端が見えない壁というか、透明な膜のようなモノにめり込み、じょじょに勢いを失くし、ついには完全に失速してポトリと落ちた。

 ――対魔法防御!

 体の表面に魔力を通すことで攻撃を受け流していた、デカヘビのガガスメイヤとはまたちがう。
 強度の異なった魔力の層を幾重にも重ねることで、脅威の吸収力を実現しているのだ。
 柔らかい素材で、力が加わるとゆっくりと沈み込み、ゆっくりと元の形に戻るマットレスのようなモノ!

 氷の槍がすべて無効化された。
 ワガハイは「にゃっ!?」と驚愕。
 その動揺の隙をついて大型エイリアンが動く。
 頭をやや下げての前傾姿勢からの――突進!
 とっさに横っ飛びにて、ギリギリかわすも直後のこと。

 ブゥン!

 飛んできたのはしっぽの一撃。
 低重力下であるがゆえに、いちど床から足が離れたら着地するまでにタイムラグが生じる。
 そのタイミングを狙われた。
 長い尾による薙ぎ払い。
 ワガハイの身は高らかにかっ飛ばされる。
 あー、現在地は竪穴の内壁であるがゆえに、正確には穴の中心部へとだけど。

 では、どうして大型エイリアンがそんなところへワガハイを飛ばしたのか?
 たまたま?
 であれば、どれだけよかったことか。
 だがちがった。
 ヤツはちゃんと考えがあってそうしていたのである。

 この竪穴の内壁沿いには重力場が発生しており、月面と同じ程度に歩ける。
 だがそれはあくまで壁に面した付近のみにて、そこから離れるほど、穴の中心部へと向かうほどに重力は軽くなっていく。芯に位置する空間ともなれば、ほぼほぼ無重力にて。

 踏ん張ることかなわず、支えもなく、掴めるモノもない。天地がコロコロ入れ替わり目が回る。
 いきなりそんなところに放り込まれたワガハイは、あたふた。
 どうにかして態勢を整えようとするも、馴れぬ環境に翻弄されるばかり、うまくいかない。
 そうしているうちにチラッと見えたのは、ヤツがしっかりと四肢を踏ん張り体を固定しては、こちらに大きく開いた口を向けている姿である。
 喉の奥がギラギラしている。その正体が収束されたエネルギーだと気づいた次の瞬間のこと――

 ピカッと閃光が生じ、視界が白に埋め尽くされる。
 放たれたのは灼熱の破壊光線。
 轟々と渦を巻き、向かってくるチカラの奔流。
 ワガハイは避ける暇もなく、呑み込まれてしまった。


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