寄宿生物カネコ!

月芝

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197 カネコ、快進撃!?

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 カネコビームの乱発により、混乱に陥った敵拠点。
 その騒ぎに乗じて、ワガハイは竪穴をひたすら下へ下へと降りていく。
 だがしばらく進んだところで――

 ドドドドド……

 肉球越しに伝わるかすかな地響き。
 ハッとしてふり返ったワガハイは「げっ!」
 見ればけっこうな数のエイリアンどもが追いかけてくるではないか。
 カネコインビジブルを継続しているのにもかかわらず、ワガハイめがけて殺到してくる。どうやらバレてしまったらしい。おそらくは体温とかで感知されてしまったのだろう。
 となれば、もはや姿を隠している意味はない。ワガハイは術を解きつつ、後続に向かってカネコスラッシュを連発し、追っ手を牽制しつつふたたびダッシュを再開した。

 逃げるワガハイ、追うエイリアンども。
 じきに下層階からも、エイリアンどもが湧き出してきたもので、背後からだけでなく横槍を入れてくる。
 それがまた本当に槍みたいな武器にて。

「光線銃とかじゃなくてよかったのにゃあ~」

 なんぞと油断していたら、ピカッと光って急に爆発したもので、ワガハイは「うにゃっー!」と悲鳴をあげた。
 よくよく見てみたら先端はバチバチと火花を散らしているし。うっかり触れようものならば、たちまち感電して身動きを封じられたところをドカンとされちゃうというシロモノであった。
 しかもこの武器、一見原始的ながらも、じつは理にかなっていた。
 なにせ月面は重力が軽い。空気抵抗も少ないから、投擲した槍がよく飛ぶ。

 ビュン! ときて バチ! グサッ! どっか~ん!

 そんなのが何本も何本も飛んでくるので、たまったものではない。

「ちぃいぃぃぃ、いい加減にするのにゃん! これでも喰らえ、カネコビーム・旋風脚バージョンっ」

 斜め左前方から湧いてきた集団目がけて放たれた怪光線。
 だがそれが放ち終わる前に、ワガハイは首をぐいんと横へ振った。
 これによりカネコビームもぐいん――敵勢を舐めるように移動する。
 ワガハイは身をひねり、さらに後方へと顔を向け、背後から迫っていた集団へも一撃を見舞う。
 190度ほど首を回すことにより、周囲に群がるエイリアンどもをまとめて薙ぎ払う。
 追っ手は一掃されて、ようやく槍の猛攻も止まった。

「ふぃ~、これでしばらくは静かになるにゃん。にしても連中が擬態を解いてくれていてよかったのにゃあ。もしも人型で追われたら、さすがに気がとがめるのにゃ。でもエイリアン形態だと不思議と罪悪感が微塵もわかないのにゃん」

 いささか不謹慎なれども、ちょっとしたゲーム感覚なのは否めない。
 もっともたとえ相手がヒトの姿で向かってきたとて、やることは変わらないだろうけど。

  〇

 敵勢を蹴散らしつつ、竪穴の底を目指す。
 そんなワガハイの快進撃を阻んだのは大型の個体である。
 立派な口から酸性の唾液を滴らせつつ「キシャアァァァァァ」
 尾ひれのある長いしっぽでビタンビタンと床を打っては、「ここから先へは通さないぞ」とばかりにイキリ立っている。

「でっか! ティラノザウルスほどもあるのにゃあ」

 どうやら番人のようだ。
 いかにも強そうにて、相手をするのが面倒だから、ワガハイはスルーしようとしたのだけども、ダメだった。
 巨体のわりに俊敏なヤツにて、するりと回り込まれてしまう。
 カネコインビジブルを発動して、いきなり姿を隠し、相手が混乱しているうちに……という策も試してみたけど、こちらも不発に終わる。
 キョロキョロするどころか、狙いすました尾っぽの一撃を放ってきたもので、「うにゃっ!」ワガハイはあわてて飛び退ることに。

「やっぱりこっちの位置がモロバレしているのにゃ。う~ん、ガガスメイヤみたいに赤外線で探知しているのかにゃあ」

 ガガスメイヤは大蛇の魔獣にて、ふだんは大森林の第四層にある古代遺跡の辺りに生息しており、高位冒険者らで編成された大規模パーティーで挑むような手強い相手である。リアル・レイドボスみたいなもので、かつて戦った折にはワガハイも苦戦をしいられた。

 そんなのに手足が生えたような相手が、いま目の前にいる。
 ワガハイはちらりと後方を確認――幸いにも追っ手の姿はない。挟撃の心配はない。
 とはいえ足止めをされていれば、じきに敵の応援が駆けつけてくるだろう。
 その前にケリをつけねば……


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