寄宿生物カネコ!

月芝

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194 カネコ、月の女王に謁見する。

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 竪穴は砲塔にて、奥底にある鏡は太陽光を収束するからくり。
 それすなわち、これはエイリアンどもの保有する超大型高出力光学兵器ということ!
 砲口が向いている先は、ワガハイたちが暮らす青い星だ。
 どれほどの威力があるのかはわからないけれども、地上が焼き払われる姿が容易に想像できる。
 そしてこんな物騒なシロモノをせっせと造っている連中が友好的なわけがない。

(こ、こいつら、侵略する気マンマンだにゃん)

 人知れず進んでいた侵略計画、世界はいま未曾有の危機に瀕している。
 だが、そのことを知るのはワガハイひとりのみにて。

(えらいこっちゃ! これに比べたら教団の陰謀とか破人どもの暗躍なんて、ヘソのゴマ粒程度にゃー)

 いきなり世界の命運を左右する騒動の渦中に放り込まれたワガハイは冷や汗ダラダラ。

(んにゃ~! ワガハイはただのんべんだらりと寄宿生活を満喫したかっただけなのに!)

 嘆くワガハイをよそに行列は進路を変えた。
 カクンと90度曲がって、内壁沿いからとある階層へと足を踏み入れる。
 そこは他よりも天井が高い階層にて、向かう先にはいろんな高さのビルをくっつけて束ねたかのような建造物がそびえ立つ。

  〇

 高い壁、大きな門扉、太い柱、厚い壁、煌びやかな照明、長い廊下……
 何もかもがこれまでとは桁ちがい。
 明らかに造りが他とは異なっている。
 当然だ。
 なぜならここは連中の城であったのだから。

 運ばれたワガハイが「ていっ」と放り出されたのは、ひときわ大きな部屋の奥にて。
 見上げた先には宝塚の舞台ばりの段々があり、一番上の段に鎮座するのは羽衣のような衣装を身にまとった貴人っぽいの。あいにくと顔は黒いベールで隠されておりわからない。でも、ダマされることなかれ。きっとこの姿は擬態にて。
 ベールの奥からじっと観察されているのはすぐにわかった。遠慮のない視線がビシバシ突き刺さる。
 他のエイリアンたちが首を垂れてはかしづいていることからして、これが連中を統べる女王なのはまずまちがいないだろう。

『ほう、これが生きた標本か。にしても奇妙な形をした生き物であるな。ムダだらけにもほどがある。なんと不完全で醜いことか。さすがは劣等種だのぉ。ホーッホッホッホッ』

 しばらく気まずい時間が続いたのちに、聞こえてきたのはそんな感想であった。
 頭の中に直接声が響いてきたもので、ワガハイはギョッ!
 いきなりめっちゃディスられたのは業腹なれど、月の女王さまが少々気になることを口にしたもので内心「ん?」

(……生きた標本ってことは、死んだ標本もあるということだにゃん? ふ~ん……って、あっ! まさか)

 わざわざ女王の御前にて披露しているということは、それだけ珍しいということ。
 そこまで考えたところで、ワガハイは遅まきながらある真相に辿り着く。
 ツクシ型ロケットの役割り。
 あれはロケットなんかじゃない……あれは標本採集のための仕掛けであったのだ。それも珍しい生物を集めるためのもの。だからこそふつうの冒険者らが近寄ろうとしても、なんらかのフィルターによって阻害されて近づけなかったのだ。
 一方でワガハイがあっさりロケットにまで到達できたのは、絶滅危惧種である寄宿生物カネコだから。
 そして生き死に関しては、おそらく月まで運ばれる過程のせいだろう。
 宇宙に対する認識や、酸素や太陽光などなど。
 ある程度の知能と能力に予備知識がなければオタオタしているうちに、激変する環境に呑まれて死んでしまう。
 そりゃそうだ。ナマモノを通常配送すれば傷むのに決まってる。

 カネコというハイスペックな生物であり、なおかつ前世のヒトであった頃の記憶があるワガハイだからこそ無事に月面着陸を果たせたのだ。
 ワガハイがつらつらとそんなことを考えていたら、月の女王さまがはや飽きて興味を失ったのか、こんなことをおっしゃった。

『フム、もうよい、さげよ。とりあえず実験棟にでも放り込んでおけ』

 にゃ~ん。


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