193 / 256
193 カネコと月の竪穴。
しおりを挟むよもや、あんなしょーもない手段で必殺技が破られるとは……屈辱である。
エイリアンどもの唾液まみれにされて囚われたワガハイは、おみこしみたいなのにのせられ、お持ち帰りされてしまう。
一行が向かった先は、あのキラキラしていた場所。カクカク、トゲトゲした建物ばかりにて、ふた昔前のマンガに登場する近未来都市みたいな街並み。
だが、それがワガハイの早とちりであることがじきに判明する。
都市部とおもわれた場所の中央には超大は竪穴があって、月の中心部へと向かって続いていたのだ。
つまりこのキラキラ見えた場所は、穴の入り口に過ぎなかったのである。
でもって、一行ってばその穴めがけてズンズン進んでいくものだから「ちょ、ちょっと待つのにゃん!」とワガハイは叫んだものの、すぐに口を塞がれて「もごもごもご」
そうしているうちに、ついに一行の先頭が縁から飛び降り穴の中へと。あとの者らも続々とこれに続くものでワガハイは「!」
これではまるで生贄を捧げる死の行進ではないか。
とっさにワガハイの脳裏をかすめたのは『レミングの集団自殺』だ。
まぁ、あれは実際にはかんちがいで、しょせんは迷信や都市伝説に過ぎないのだけれども。
それはともかくとしてワガハイのことである。
どうにかして逃れようとするもかなわず。
ついには穴の縁にまで運ばれてきてしまった。
体を固定されており、台座の上にのって担がれているから、足下のほうがまったく見えない。
この状態で崖の際に立たされるのは、めちゃくちゃ怖いんですけど。
「んー! んんー! んんんーっ!」
恐怖で涙目になったワガハイにはかまわず、非情にも台座がゆっくりと傾いていく。そしてガッックン! 視界が90度回転し、ワガハイは穴の底へとめがけて真っ逆さまに……
………………落ちて行かなかった。
素知らぬていにて、おみこしは内壁沿いをテクテク壁歩きにて進んでいくもので「あれ?」
落っこちたのかとおもっていた面々も、先ほどまでと同じように列をなしては歩いているし。
どうやらこの竪穴、周縁部および内壁沿いに重力が発生しているようだ。
そのために地表と同じように歩けている。
ばかりか穴の内部はメカメカしい多層構造になっており、たくさんのエイリアンどもが蠢いては何やら作業に精をだしていた。
地上部分はあくまでオマケみたいなものにて、こちらがメインの活動拠点であることは明白にて。
(にゃ、にゃんだこれは? 月の内部、めっちゃ改造されとる!)
どことなく雰囲気がメテオリト大森林にある古代遺跡に似ている。もしかしたらこいつらの親類縁者の作ったモノだったのかしらん。このエイリアンども、どことなくフィルミガっぽいんだよねえ、容姿といい行動といい。
あぁ、フォルミガっていうのは古代遺跡に住み着いていたアリみたいな昆虫の魔獣たちのことね。女王を中心にして爆発的に増殖しては、群れにて一帯を席捲するやっかいな連中であった。
さすがに月そのものが彼らの建造したものではないのだろうけど、どちらにせよ規模と技術がすさまじい。あのしょうもない見た目詐欺な擬態はともかくとして、只者じゃないことだけはたしかである。
(ツクシ型ロケットを作ったのはこいつらで間違いないようだにゃあ。この様子だとワガハイをすぐにどうこうするつもりはないみたいだし、ここはしばらくおとなしくして様子見するかにゃあ~)
無駄に暴れて反感を買ったり、抵抗して体力を消耗するのは愚策。
静かに魔力を練りつつ、チャンスが到来するのを待つべし。
腹を据えたら、とたんに気持ちも落ちついた。
で、あらためて冷静になったところで周囲を観察すれば、あるモノが目に入る。それは……
「へっ、鏡?」
竪穴の底の方にてキラリと光っていたのは、超大な鏡である。
いや、たんに置いてあるのではなくて、その空間そのものが鏡の間になっているかのよう。
さらに目を細めてジーっと見てみれば、空間の中にいくつもの柱みたいなのが立っている。
形としてはビルほどもあるゴン太の蛍光灯を立てて並べているかのようだけど。
う~ん、なんとなく見覚えがあるような、ないような……
記憶を探るうちに、ハッと思い出したのは某ロボットアニメの金字塔である。
いまだにシリーズを重ねているアニメにてプラモデルも大人気なアレの、たしかシリーズ第二作目のラストバトルの舞台になった……
(んにゃ! これってまさか……だとしたらここは都市部なんかじゃにゃい! ここは……)
竪穴の正体に気がつき、ワガハイはサーっと血の気が引いていく。
6
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。
だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。
それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。
王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!?
けれど、そこには……。
※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?
プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。
小説家になろうでも公開している短編集です。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる