寄宿生物カネコ!

月芝

文字の大きさ
上 下
174 / 254

174 カネコと仮面の令嬢。

しおりを挟む
 
 ――お、鬼!?

 これが初見時にワガハイが抱いた彼女への第一印象である。
 お付きの執事にエスコートされて、馬車から降りてきたご令嬢。
 さすがは王族との婚姻を打診されるだけあって、可憐で気品があり所作が優雅である。
 何をしても絵になる。
 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花……なんて言葉がピッタリ。

 なのにどうして鬼なのかといえば、ズバリ! 顔につけているお面のせいだ。
 細い首から上にのっているのは厳つい仮面。鬼瓦みたいなデザインにてワガハイが想像していたのと全然ちがう。
 てっきりイタリアのヴェネツィア・カーニバルとかでかぶる、ちょっと妖しくも幻想的な銀のマスクとかなのかとおもいきや、神楽舞とかの時に使用されるようなゴツイのだった。

 う~ん、仮面の存在感が半端ない。
 もっとオシャレなのかとおもっていたのに……
 これでは王弟の息子がうんざりしちゃうのもムリはないかも。

 とか、失礼なことを考えていたら執事にギロリとにらまれた。
 オールバックのイケメン眼鏡なこの執事もまた只者じゃない。一切のソツがないというか、ムダのない洗練された動き。まったく隙がない。
 たぶん令嬢ともども、この執事も超強い。
 いっしょにやってきた護衛の騎士たちも、みな屈強にて実力は推して知るべし。

 三食昼寝付、豪奢な貴族の屋敷内にてゴロゴロしては、たまに仮面の令嬢の話し相手をして「オホホホ」と上品に微笑むだけの簡単なお仕事。
 ギルド長から直接そう説明されたものの、ワガハイは疑っていた。
 けれども、この様子ならば本当に何もしなくてもよさそうである。

「……とか油断していたら、これだにゃあ~。まさかこんなオチが待っていたにゃんて……」

 問題が発生したのは仮面の令嬢の滞在先だった。
 てっきり領主館なり迎賓館なり高級ホテルあたりかとおもいきや、さにあらず。
 よりにもよってあそこだったのである。

『遠路はるばる、ようこそお越しくださいました。みなさま』

 一行をうやうやしく出迎えたのは、タキシード姿のよく似合う紳士なホワイトゴースト。
 この透けてるダンディさんとワガハイは因縁浅からぬ仲にて。

 彼は元リッチ(金持ち)でリッチ(死霊)なリッチーさん。
 生前の頃には、金と権力にあかせてやりたい放題。
 広くて豪華な屋敷にて毎夜宴に興じてはウハウハ酒池肉林の生活を送るも、とある美しい娘に懸想したのが運の尽き。
 娘には将来を誓い合った若者がいて、娘と共謀して「この腐れ外道が、死にさらせ!」とブスリと殺られちゃった。
 ばかりか、その骸を屋敷内にある秘密の地下室の壁に埋め込まれてしまう。
 しかし憎まれ子世にはばかる。
 腐った魂は転んでもただでは起きない。
 殺され死霊と化しては屋敷にとり憑き、居座り続けるようになった。

 この事態に頭を痛めていたのが商業ギルドだ。
 幾人かの手を経て商業ギルドが屋敷を管理することになったのだが、自称・死霊王が「ガハハハ」と居座っているせいで、空気の入れ換えや掃除、庭の手入れもままならない。
 貴族街でも屈指の大豪邸なのに、すっかり荒れ果てお化け屋敷に!
 街の景観を損ねるばかりか、隣近所の地価までだだ下がりにて。そのくせ高い税金だけはしっかりとられるせいで、すっかり不良債権となってしまった。
 これを憂いて、腕に覚えありの聖職者たちを派遣するも、みな死霊王に返り討ちにされて泣かされてしまう。

「ちくしょう。いっそ火でもつけて全部燃やしてしまうか」

 と、いよいよ思いつめていた時に、お鉢が回ってきたのがワガハイのところであった。
 もっとも依頼内容は屋敷の掃除だったけど。
 屋敷だけでなく、そこに巣くっていた死霊王をもワガハイの魔法により、ピッカピカにした結果、リッチーはいまの姿に生まれ変わったというウソのような本当の話。

「にしても、よりにもよってどうしてここに?」

 ワガハイがこそっと執事さんに訊ねたら「お嬢さまのご要望です」
 滞在先の候補を絞っている時に、たまたまヘンテコな屋敷があるというウワサを耳にしたお嬢さまが「いいわね、面白い。そこにしましょう」と即決してしまったそうな。
 どうやらこの仮面の令嬢は、格好が奇抜なだけでなく、中身もかなり変わっているっぽい。
 そんな彼女が辺境でおとなしくなんてしているだろうか?
 う~ん、ワガハイは一抹の不安を覚えずにはいられない。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

公爵に媚薬をもられた執事な私

天災
恋愛
 公爵様に媚薬をもられてしまった私。

うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?

プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。 小説家になろうでも公開している短編集です。

処理中です...