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152 カネコ、迷宮入り。
しおりを挟む近頃、国内にて出回っている危険な麻薬。
その出処を探っているうちに、辺境の城塞都市トライミングに辿り着く。
しかし調査に向かった間諜らはみな消息を断ち、のちに死体となって発見された。
この事態を受けて、中央より派遣されたのが魔剣グラムボルグを持つ剣姫である。
独自の高い追跡能力を持つがゆえの人選であった。
捜査の過程で様々な妨害工作を受けるも、商業ギルドからのタレコミにて怪しい商会の存在を知る。消された間諜らも調べていた模様。
なのでこの商会を張り込むことになったが、わずか一日にして飽きたワガハイは夜更けに潜入を敢行する。
そして地下深くで発見したのは、ヤバそうな施設とナゾの封印であった。
賢いワガハイは「くわばら、くわばら」
君子危うきに近寄らず、と触れることなくスルーしようとするも、なぜだか勝手に封印が解けて、なかからあらわれたのはヘドロが人型をしたような怪人八号なる奇異な存在である。
その性質は凶暴にて、いきなり襲いかかってきた怪人八号。
なし崩し的に戦闘に突入することになった。
戦いのさなかに明らかとなる怪人八号の恐るべき能力――分裂増殖。
斬れば斬るほどドンドン増える。
炎もダメで、表面が焼けたはしから再生しちゃう。
さらには覚醒するほどに動きが機敏になり、パワーも増し、手強くなっていく。
さらにさらに痛みや恐れを一切感じない死兵と化しては、よってたかってこちらをタコ殴りにしようとしてくるではないか!
このままではマズイと、ワガハイは撤退する。
かくして戦いは地上へと舞台を移した。
そこへ魔剣と剣姫も応援にかけつけ、協力することでどうにか増えた怪人八号たちを捕縛することに成功し、ホッとした矢先のこと。
みんなの目の前で、例の商会が業火の焔に包まれ跡形もなく消滅してしまった。
〇
騒動があった翌日――
まだ薄っすら熱が残っては燻っている竪穴。
その縁に立っていたのは剣姫と魔剣とワガハイである。
『ものの見事に消滅しておる。因果の糸も完全に途切れているな』
魔剣によれば、たんに焼いた程度ではこうはならないという。
たしかにその通りにて、あまりにもキレイに焼けている。
まるで、商会のあった場所だけをごっそりすくったかのような跡にて。
「……ということは、あれはただの火じゃなかったということかにゃあ?」
『うむ。おそらく派手に燃やしたのはこちらの目を欺くためのモノで、裏でなんらかの特殊な魔法を行使したのであろう』
それこそ証拠隠滅のために。
破人とやらの仕業であろうが徹底している。
なんぞとワガハイと魔剣が話していたら。
突然、剣姫がぴょん。穴へと身を投げたものだからワガハイたちは、ギョッ!
あわてて穴をのぞき込んだ時には、もうその姿は深淵に消えていた。
で、待つことしばし。
まるで何事もなかったかのようにして、ひょっこり戻ってきた剣姫は「……」
無言のままで首を横へと振った。
念のために底を調べてみたが、何も残っていなかったらしい。
よって物証として手に入れられたのは怪人八号のみ。
破人らの動向は途切れ、かき集めていた物資をどこに送っていたのか、その搬送方法も不明のまま。肝心の麻薬の出処もわからない。そしてアロセラ教団との繋がりもまた……
「とどのつまり、迷宮入りかにゃあ」
迷宮入り――
犯罪事件で犯人がわからない、事件が解決しないままで捜査が打ち切りとなること。お宮入りともいう。
結果だけ見れば、まんまと破人らにしてやられたような格好にて。
ただし、わざわざ辺境まで足を運んだことでわかったこともあると魔剣は言う。
『どうやら薬の流れは南の方からきているようである』
あくまでまだ推測の域を出ないが、ほぼ確定だろうと魔剣は自信をにじませ、剣姫もコクコクうなづく。
てっきりワガハイにめんどうな張り込みを押しつけて、自分たちはのうのうと接待を受けていたのかとおもっていたら、ちゃんと捜査会議をしては集まった情報を精査していたらしい。
でもって、南といえばあの迷惑な国があるところで……
「またなのかにゃあ~。後腐れがないようにとっとと潰せばいいのにゃん」
おもわずそう口にしたら、すでにその方向で周辺各国が協議に入っていると聞かされて、ワガハイはスンってなった。
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