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123 カネコ、念願の寄宿生活? パートⅡ
しおりを挟むメテオリト大森林での過酷なサバイバルから始まり、幾多の戦い、出逢いと別れをくり返し、ときに涙を流し慟哭してはついうつむきそうになるけれど、それでも「負けにゃい」と顔をあげては歯を食いしばり前へと。
果敢に挑め、異世界!
半分リアルにて実体験をベースにし、残り半分は元の世界にあった人気アニメやマンガなどを丸パク……げふんげふん、参考にしてオマージュした自信作。
紙芝居『カネコの大冒険――立志編――』
子どもたちに大受けした。保護者たちもけっこう喰いつきがいい。
用意した五十冊の絵本は、格安ということもあってまたたく間に完売する。
だが、いっしょに売ったワガハイの抜け毛で作った御守りは、さっぱり売れなかった。
それでもたしかな手応えを感じたワガハイは、さっそく続編の制作に着手する。
次は冒険者デビューから古代遺跡での活躍を描いた『カネコの大冒険――激闘編――』を近日公開予定だ。
鋭意制作がてら、もちろん紙芝居の興行も続けている。
いまはまだ根城にしている公園限定だが、ゆくゆくは都市内の公園すべてを巡り、トライミングキッズたちの心をワシ掴みにし、ワガハイ色に染めあげる所存。
その一方で、冒険者活動もおろそかにはしない。
なぜなら、このふたつは裏で密接にリンクしているからだ。
子と親は基本的にセットである。
清掃活動を通して主婦層から認められ、紙芝居や絵本にて子どもたちから支持を得られれば、やがてそれらは家庭内にて結びつき、不動の人気者としてカネコの存在をより高いところへ押し上げることになるだろう。いや、きっとなる!
これはタネまきみたいなもの。
撒いたタネもいずれは大地に根づき、花を咲かせ実を結ぶ。
ワガハイというアイドルを崇拝する、強固な支持層という実を……
なんという知略! なんという深謀遠慮! なんという周到綿密!
さすがはワガハイである。
さすがのワガハイである。
これはもう勝ちが確定したも同然であろう。
「にゃーはっはっはっ」
カネコ、高笑い。
だがしかし――
〇
「どうしてこうなったのにゃっ!」
鉄格子のなかで、ワガハイは叫ぶ。
ところは衛士隊の詰所の留置所である。
あの『怪奇! 教会が黒いベトベトさんに覆われて大パニック事件』の被疑者として連行されたときにも、お世話になった場所だ。
よもやまた戻ってくることになろうとは……
あれは紙芝居を続けること九日目のこと。
いそいそと興行の準備をしていたところに、響いたのはけたたましい警笛音。
ピピピピピィイィィィィーッ!
あらわれたのは、ワガハイとは何かと因縁浅からぬ獣人の婦警さんである。
マンガやアニメならば、ここからラブコメが始まりそうなのだけれども、いまのところそんな気配は微塵もない。ただただ職務熱心なお姉さんだ。
あいかわらずヒロイン不在にて、ゆるゆる続くワガハイの異世界転生物語。
で、いったい何ごとかとおもいきや、いきなりワッパをガチャンとかけられ、告げられたのが……
「無許可営業および無闇に人を集める騒乱罪、虚偽の流布に国家転覆を扇動する内乱罪の疑いもあるので、あなたを拘束します」
婦警さんに逮捕されちゃった!
う~ん、どうやら紙芝居の影響力が体制側に危険視されたっぽい。
というか、これまでにもたくさんいたであろう転生者たち、彼ら彼女らが紙芝居に手を出していなかったのって、じつはこれが理由だったりしちゃったりする?
かくして留置所での二度目の寄宿生活が始まろうとしている。
当然ながら事情聴取も行われる。
担当する取り調べ官は、もちろんアイツだ。
以前にワガハイを隣国のスパイ呼ばわりし、お魚ドロボウと決めつけ、ことあるごとに珍々な迷推理を披露する小役人。
取り調べ室にて顔を合わせるなり、石頭のこんこんちき野郎が「またおまえか」とげんなりし、ワガハイも「それはこっちの台詞だにゃん」と口をへの字にする。
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